仏師として青葉区を中心に仏像彫刻の講座を開いている 岩渕 俊亨(しゅんほう)さん 千葉県在住 65歳
「見守る」仏像に願い込め
○…「一度体験したら、やめられなくなる――」。姿や形に意味を込め、心を無にして仏像を彫る。約30年前から青葉台などで仏像彫刻の教室を開催し、約40人の受講生による展示会も節目の10回目を迎える。「みんな張り切っている。像から醸し出すオーラを見てほしい」
○…群馬県出身。ものづくりや美術が好きで、高校卒業後は造形を学ぼうと布団だけかついで東京へ。著名な彫刻家の内弟子として勉強する日々だったが、25歳の時に京都・勧修寺(かじゅうじ)の本尊、千手観音像を見て衝撃を受けた。長きにわたり、信仰を受けてきた像の神々しさを目の当たりにし、「神秘的な場所で。ボディーブローを受けたみたいに響いた」。改めて仏師に弟子入りし修業後、30歳で独立。今では總持寺に高さ3mの釈迦牟尼佛(しゃかむにぶつ)を納めた仏師として名を馳せる。納めた仏像に込める願いは共通して「見守ってくれる存在」だ。「一人になって悩みや苦しみを振り返るとき、仏像は優しく抱擁してくれる。そんな力があるんです」
○…目標とする仏像は天平(てんぴょう)時代のおおらかで優雅、上品な作品。作業の一つひとつに全身全霊を込めるが、1年以上かけて作品を仕上げるため、時には息詰まる瞬間もあるとか。「だから毎日の体調管理が大事。趣味は散歩です」。日々伝統工芸に打ち込む一方、2匹いる愛猫を撮影してはインスタグラムに投稿するといった隠れた一面も。
○…「人前に出るのが苦手」と、指導を始める当時は抵抗もあった。それでも「彫刻刀を振るう生徒の嬉しそうな顔がたまらない」と話し、母親ほど年の離れた教え子から分厚い作品集をもらったと喜びをにじませる。次の展示会では木曽の檜を使った作品が100体ほど並ぶ。「うまい下手はあるけどみんな一生懸命」と優しく微笑んだ。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>