能面師として日本の文化を国内外に伝える活動を展開する 渡部 庄治さん 北八朔町在住 71歳
探究心、尽きることなく
○…趣味として始めた「面打ち」の腕を磨き25年。国内外のコンテストに出品するほか、仲間たちと面打ち教室などを開いている。腕が見込まれ、今ではプロの能楽師からも発注を受けるようになった。古(いにしえ)から残る能面を収めた写真集などを見ながら型紙なしで彫り進める。小さな傷や風化の跡まで精密に再現する技に、長年木と向き合ってきた職人としてのプライドがにじむ。
○…1943年、新潟県魚沼市生まれ。中学卒業とともに東京の木型職人に丁稚に出た。21歳の時、技能五輪に出場。黙々と腕を磨き、28歳で独立したが、ドルショックの煽りを受け、仕事が激減。やむなく金型へと転向した。面打ちを趣味として始めたのはこの時代。「金型ばかり扱っていて、木が恋しくなった。柔らかく、優しい木に触れたい衝動が襲ってきてね」。各地の教室に通いながら技を習得。仕事が終わると毎晩面作りに励んだ。
○…2人の娘が嫁ぎ、今は妻と2人暮らしている。地方で開催される事が多いコンテストで賞を受けると決まって2人で表彰式に出かけ、旅行を楽しんでいる。表彰式や展覧会で、自身が丹精込めて彫り上げた作品と再会する瞬間が至福の時。夫婦で能面談義を交わしながら、他の受賞作品の技を研究している。「独立したばかりの頃、食べるにも困る時代があった。妻には苦労かけたから、いい面を作って色々な所に連れて行ってあげたい」と照れくさそうに微笑む。
○…若い頃、仕事などで海外に訪れた際、自分の国の宝や誇りについて熱く語る多くの外国人に感銘を受けた。「今の日本で、これはと言うものを熱く語れる日本人の若者がどれだけいるだろうか」。日本古来の伝統や、受け継がれてきた技の数々を、まずは日本人に知ってもらうことが必要だと感じている。「力の続く限り良い面を作り、発信していきたい。それが自分に出来る全てと信じて」
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