低コスト・時短のチーズ製造法を研究・開発し全国の酪農家支援に取り組む 松井 三二(さんじ)さん 長津田町在住 85歳
85歳のチーズマイスター
○…凝固剤に酢を用い、酵母で旨味を加えることで牛乳からプロセスチーズを作る方法を発見。輸入チーズを使い、長時間かけて製造する従来の方法から、発酵・熟成を経なくてもできる低コスト・時短の夢の製法を開発した。「小さな酪農家でも自社製造のプロセスチーズが作れるようになる。これで酪農家を応援したい」と意気込む。先日、日本に次いでアメリカでも特許取得に成功。だがそれはこの技術を大切に活用してくれる人を守るため。この製法を必要としてくれる酪農家があれば誰にでも喜んで教えるつもりだ。
○…岐阜で生まれ、2歳の時、移民として酪農家を始める両親について北海道へ。終戦の年、14歳で地元の乳業会社(後の雪印メグミルク(株))に就職。高等小学校しか出ていない事に引け目を感じ、就職には気が進まなかったが、両親の「周りの人を大切にすれば道は開ける。与えられたものに忠実であれ」という言葉が自分を支えてくれた。戦後間もない時分、仕事はもっぱら乳成分から軍事機用接着剤を作るものだった。
○…雪印が関東での家庭用チーズ製造を本格的に稼働させるべく区内上山に横浜工場を建てたと同時に緑区へ。ここでプロセスチーズの製造・開発に携わり、1989年退職。定年後、酪農家へのチーズ作り指導を頼まれた際、参加者からあがった「こんなに時間がかかるのか…」の声が、時短チーズの研究のきっかけとなった。「大きなテーマをもらった。与えられた仕事に精一杯取り組んだお蔭かな」とほほ笑む。
○…「忘れっぽい性格」を自負し、毎日寝る前に日記をつけるのが日課。50年間書き溜めた日記にはチーズ作りの苦労や喜びなどが綴られている。チーズと同じ位登場するのは家族の事。「子どもに大した財産は残せない。残せるのはこの特許くらい。この製法がいつか多くの人の役に立つ、そんな景色を見せてあげられたら」
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