小型リヤカーを使って、移動しながら中古品の販売を行っている 近(こん) 恵子さん 東本郷在住 70歳
遅くからでも花は咲く
○…昨年、長年連れ添った夫を病気で亡くした。ふさぎ込み、自宅から一歩も出ない日も。「いつまでも落ち込んでいても仕方ない。何か始めなきゃ」。大のフリーマーケット好きが高じて、始めた中古品販売。小型リヤカーに古着や雑貨などをずらりと乗せ、東本郷付近で即席フリマを開催中だ。買い物客とたわいもない会話に花が咲く。御年70歳。「『リヤカーを引っ張って疲れないの』とよく聞かれるけど、やりたいことやってると不思議と疲れないのよ」を元気に笑った。
○…女性少女漫画家の草分け的存在、水野英子さんに憧れ、漫画家を夢見た子ども時代。『星のたてごと』を読むため、毎月本屋に走っていた。だが、いつしか夢を諦め、就職、結婚、出産。専業主婦になり、子育てに追われた。書くことも好きだったため、小説を書き出版社に出していた時期も。「『何か』を成し遂げたかったけど。才能がなかったのよね」
○…物と人に出合える場を作っているフリマ。「70歳になって、やっとやりたいことが見つかったんだよね」と晴れやかな表情が印象的。キャリアもお金もない。それでも大好きなフリマならば、と古希で踏み出した新しい道だ。「地域に根付き、細く長く。80歳までは最低でも続けたい」
○…「夫は、真面目で優しい人だった」と振り返る。寂しさがこみ上げてくる時もある。「それでも時間は戻らないからね。残りわずかの人生、やりきらなきゃ」とにこり。そんな前向きな性格からか、「近さんから元気をもらえた」という声も多い。最近、再び小説を書いているという。タイトルは「70歳ババア起業する」。紆余曲折を経て、リヤカーフリマというなすべきことに出合うまでを描く。その瞳はきらきらと輝いていた。
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