南区在住で大衆文化の評論活動を行う指田(さしだ)文夫さん(65)が先ごろ、黒澤明監督の映画に関する新しい解釈をまとめた著書『黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避』を現代企画室から出版した。
黒澤映画の中でも特に1949年から50年に公開された「静かなる決闘」「野良犬」「醜聞」「羅生門」の4作品を中心に批評。指田さんは「静かなる決闘」を観て、「終わりがあっけなかった」と作風がほかと大きく異なると感じ、研究を開始。関係者の証言や映画会社「東宝」の資料を検証した。結果、映画監督としての才能を評価していた東宝により、黒澤監督が戦時中に徴兵を免除されたのではという推測を得た。
徴兵免除に着目
指田さんは「戦前の黒澤は、『姿三四郎』を代表とする娯楽映画監督だった。戦後、徴兵されなかった黒澤は、戦争に行かなかったことを申し訳ないと思い、シリアスな作品に変わったのは、贖罪意識が影響しているのでは」と分析する。
指田さんによると「贖罪意識に着目した黒澤映画批評は見たことがない」という。「今年は『姿三四郎』での監督デビュー(43年)から70年。黒澤映画に新たな視点から光を当てられれば」と話す。本は1995円。問現代企画室【電話】03・3461・5082。
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