港北区役所職員が自作の鎧を身にまとった武者姿で地域に「出陣」――。
福祉保健センターの梯弘人さん(34)は、自身が手づくりした甲冑を着て、地域のイベントにスタッフとして参加し、会場を盛り上げている。
昨年4月には、続日本100名城に選定された小机城を舞台とした、小机城址まつりに参加。その後に結成した区役所内の横断的なプロジェクト「小机城・篠原城盛り上げ隊」では、メンバー5人のリーダーに就いた。
小机駅を会場としたイベントでも鎧姿で登場し、来場者を楽しませた。188cmと長身なこともあり、会場でも目を引く存在。家族連れや外国人から写真撮影を依頼されることも多く、梯さんは「その時は『一日有名人』の気分だった」と率直な気持ちを表現する。
区役所の同僚の評価は「分からない」(梯さん)というが、地域振興課係長は「イベントでの鎧兜の登場は限られるため、雰囲気づくりに一役買っている部分があるのでは」と話す。
戦国時代を研究
小さなころから戦国時代に興味があったという梯さん。考古学部で部長を務めた高校時代には、城見学ツアーを企画し、部員集めに奔走したことも。大学では日本の歴史学を専攻し、戦国時代をテーマに研究を続けた。
趣味として所属しているのが鎧兜を自作し武者行列等のイベントに参加するグループ「鎧廼舎(よろいのや)・うさぎ塾」。現在の活動の中心は京都だが、もともとの発祥地は小田原。逗子海岸で行われる流鏑馬や小田原北條五代祭りにも参加するという。
高校時代、グループの活動内容が紹介された新聞記事を父親に見せられたことが、入会のきっかけ。最初は「(鎧兜の完成度に)半信半疑」だったというが、本格的な内容に驚いた。鎧の鉄板やなめし革の部分は、材料として主に紙を使用するが、くみひもや装飾の金具は京都の伝統工芸品。鎧の下に着る装束は、もちろん本物だ。
鎧は3領制作、今も
制作に費やす時間は、「定期的にある程度の時間が取れる場合」(梯さん)で、兜におよそ3カ月、鎧に6カ月。学生時代に3領をつくり上げた。基本形である二枚胴鎧や胴丸をアレンジしたオリジナルだ。現在、着用するのも学生時代のもの。「学生時代から体型を維持している?」の問いには「二枚胴鎧は前後2枚に分かれていて、結ぶ紐で調節できるから」と笑顔で。
現在は源平時代の大鎧を手掛けているが、仕事の合間の作業とあって7、8年前につくり始めたものが「8割程の完成度」。今年中には何とか完成させるつもりだという。
「地域の役に立ちたい」
梯さんによると、小机城や篠原城は、各遺構が残った学術的にも貴重な地域の資源。「そんな魅力を見直す機会となるイベント等を通じて、少しでも地域の役に立てたら嬉しい」。今年も華麗な武者姿で颯爽と来場者を案内し、事務方として地域を支える梯さんが見られそうだ。
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