江戸時代から続くとされる南山田の「虫送り」。稲穂などの害虫退治を願う”田祭”として区内他地区でも行われていたが、現在まで続くのは南山田のみ。2005年に横浜市無形民俗文化財に指定された伝統行事は、今年7月25日の開催で40回目の節目を迎える。
テンテンドンドン テンテンドンドン テンテケテンコリャヨーイヨイ
虫送りは、山田神社を出発後、総勢約400人の老若男女が笛や太鼓の音とともに独自の掛け声で町内を練り歩く。途中、200本超の松明に明かりを灯すと、幻想的な光景が広がる。かつてこの一帯に田園風景が広がっていた頃、稲穂につく害虫を松明の明かりで集め、町の外まで追い払っていたという民俗文化が今なお息づく。
楽しみな田祭
詳細は明らかでないが、江戸時代から続くとされる。元々は稲作に従事する大人の男性が主体となって行っていた。『都筑郡中川村々是調査書』によれば、当時「田祭正月(虫送り)」と言われ、農民にとっては厳しい農作業の骨休めイベントだったことが窺い知れる。
そんな伝統行事も、戦争の影響を受け、1940年に一旦中断。終戦後、幾度か開催されたものの、静かに消滅の危機を迎えようとしていた。しかし、1976年、地元有志らの尽力により『伝統の灯り』が復活、2005年には市無形民俗文化財に指定され、『横浜の宝』として受け継がれることになった。
ニュータウンの開発により、田園地帯は宅地と道路へと様変わりした。そして大人だけの祭りは、子どもを交えた地域の一大イベントへと変貌。田んぼのなくなった今は、参加者たちの無病息災や畑作物等の豊作を願い行われている。
末代まで伝承を――
そんな虫送りが今年40回目を迎える。これまで開催に尽力してきた虫送り保存会の栗原毅さんからバトンタッチを受け、新たに齊藤一雄さんが4代目会長に就任した。齊藤さんは「昔と違って安全面などで実施するには難しい面もある。しかし消防団や交通安全協会など、多くの方の協力もあり事故なく続けてこられた。市の文化財として指定も受け、末代まで伝承しなければという使命を感じている」と話す。
虫送りは南山田町内会(高橋今朝次会長)、保存会主催、各関係団体協力のもと実施される。子々孫々と地域で受け継がれた伝統文化のリレーはこれからも続けられる。
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