横浜大空襲の朗読劇を脚本する川和中学校の演劇部顧問 山田 容弘さん 港北区在住 56歳
朗読で伝える戦争の記憶
○…今年は戦後70年の節目の年。戦争を風化させないために、川和中演劇部の顧問として自身が脚本した横浜大空襲の様子を語り継ぐ朗読劇を指揮している。中学生が当時の人々の気持ちに近付こうと魂を込めて演じる姿に、聞く人は心を動かされる。「戦争を知らない世代が戦争体験者を演じることは生半可な気持ちではできない。それでも続けるのは、語り継ぎたいという強い気持ちがあるから」と熱い思いを語る。
○…その裏では困難もあった。台本にある「傷口から蛆がわく」という一文が気持ちが悪くて読めない、と部員から声が上がった。「言葉にするのもためらわれる出来事でも、現実に起こったこと。目を背けてはいけない」と最後までこの一文を残し続けた。その思いが生徒にも伝わり、気持ちを込めて演じきった。演劇を通じて生徒の成長を見守る「演劇教育」を信条に、日々の指導にも熱が入る。
○…東京生まれ横浜育ち。人前に出るようなタイプではなかったが、高校生の時に人手不足で駆り出された演劇部の公演で演劇に目覚める。「舞台上で味わった非日常がずっと心に残っていた」。大学のサークルでも演劇に熱中。劇団への加入も考えるも、選んだのは教師の道だった。演劇部の指導をしたいという思いから教師に就いたが、生徒から学ぶこともあるのがこの仕事の特権。自由な発想から生まれる演技に「そんな表現もあったのか」と驚かされることも多い。そんな生徒の姿が時に眩しく見える。
○…横浜市中学校演劇研究協議会の副会長を務める。部の指導に加え、中学生の演劇の場づくりのためにも奔走する毎日。貴重な休日は教え子が出演する映画や舞台に足を運ぶ。娘とららぽーと横浜などに買い物に行くのが「ほっとするひと時」だ。「横浜大空襲の朗読劇が伝統になりつつある。教員人生を終えてもこの舞台に携わりたい」。これからも戦争を語り継ぐ強い意志をみせる。
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