自然生態園で子どもたちに米作りを10年以上指導している 金子 孝雄さん 茅ケ崎東在住 76歳
米一粒の大切さを伝える
○…「大事に育てた米をみんながおいしそうに食べる姿が嬉しくて」。茅ケ崎公園内にある自然生態園で近隣小学校や園利用者に米作りを指導して10年以上。園内の生物や植物を守るため無農薬にこだわり、日々の丁寧な手入れに妥協はない。「普段食べている米も口に入るまでこんなに手間が掛かるんだと知り、食べ物を大事に思う心を養ってもらいたい」
○…農業を営む茅ケ崎東の実家で生まれ育つ。「今と違い、昔はここら一帯農地だらけだった」。農作業を手伝うのに学校を休むこともあったという。「それが当たり前だった。作業が終わって、近所の子どもたちと畑や山を駆け回って遊ぶのが好きだった」と当時を懐かしむ。中学卒業後に家業を継ぎ、築地市場に米や野菜を卸すなど汗を流した。ニュータウン開発の造成が進んでいたのはその頃。「街を発展させるには仕方がなかった」と土地を手放し、35歳で農業から一線を離れる。その後、義理の兄のもとで大工として30年間仕事を全うした。「今の家も自分で建てたんだ」と満足げな表情を見せる。
○…「生まれ育った街に、恩返しをしたい」と大工を引退後、地域に深く関わるようになった。現在はお囃子や防犯指導員など、毎日忙しく動き回っている。趣味は妻のミツ江さんの影響で始めたグラウンドゴルフ。「初めは年寄りのスポーツなんて」と避けていたが、やっていく内に競争心が芽生えた。週2回の練習をコツコツと重ね、市大会で優勝し市長から表彰を受ける腕前に成長。周りからの人望も厚く、市グラウンドゴルフ協会の会長も務める。
○…小さい頃、米一粒こぼすと母親に「粗末にするな」と怒られた。「長生きして子どもたちに、米作りを教え続けたい。街は変わっても食べ物を大切に思う気持ちは忘れてはいけない」。そう語るその手には「ありがとう」と書かれた沢山の子どもたちからのお礼の手紙が握りしめられていた。
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