県立がんセンターの木曜ミニコンサートで、感謝を込めて歌い続ける 美山 容子さん 中希望が丘在住 78歳
「歌いながら倒れても本望」
○…「絶対に最後まであきらめないで。必ずいいことがあるから」。歌を聴く患者に歩み寄り、そっと手を握りながら語りかける。県立がんセンター正面玄関ホールで毎週開催されている「木曜ミニコンサート」出演者の一人として、シャンソンを歌い続けている。「がん体験を通じて、みなさんを勇気づけられれば」。支えになっている人全てに感謝を込め、マイクを握る。
○…腎臓がんを患い、5年前に同センターへ。抗がん剤の副作用で丸坊主になったときは「ショックだった。でも仕方ないなって」。病床で歌いたい気持ちを募らせ、譜面に向かった。そのころコンサートの存在を知り、運営者の「ボランティア会ランパス」にCDを送って出演を希望し、決定。以来、毎年公演を続け、今月22日で12回目を迎えた。
○…県立平沼高校に在学中、作曲家の遠藤実氏らに師事。20代前半で日本マーキュリーレコードからデビューし、演歌歌手として数年間活動した。休止期間を経て、夢だったシャンソンの道を歩み出す。きっかけは、目的を持った一般人を応援するTBSのテレビ番組「地球ジグザグ」に応募し、採用されたことだ。シャンソンの本場フランス・パリに10日間滞在し、エディット・ピアフら大物も歌った店で熱唱。フランス語を勉強してローンで旅費を捻出し、翌年に再びパリへ。歌わせてもらえる店を探し、成長の証を示した。「シャンソンは詩で、人生を語れるもの。濃厚で味がある」。その思いは、今も褪(あ)せない。
○…3人の息子は母親の晴れ舞台をあまり気にかけない様子だが、「死ぬまでやるんでしょ」と、渡仏以降、認めてくれているそう。「あと何年生きるかわからないけど」と笑いながら、「一にも二にも感謝」。入院当時、主治医や看護師から受けた患者第一の気配り、心の支えは片時も忘れたことはない。恩返し公演を続ける一方、「もう一度パリで歌いたい。あのときのお店で」。密かな夢が、胸を駆けめぐる。
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