「がん看護専門看護師」の資格を持つ、神奈川県立がんセンターの看護局長 渡邉 眞理さん 和泉町在住 55歳
「人」に寄り添い、今を生きる
○…2013年に新病院として再出発する、県内唯一のがん専門病院。300人以上の常勤看護師を擁する看護局長に就き、2年目を迎える。現場で20年以上、患者とその家族、職員と共に悩み、考えてきた。「がんとは『死』を現実にイメージするもの。苦悩する患者さんに寄り添い、エネルギーをもらえるのは、かけがえのない宝物」。念頭に掲げるのは、看護にやりがいを感じられる環境づくりだ。
○…高校時代、福祉施設のボランティア活動がきっかけで看護師の道へ。新人時代は成人病センター(現がんセンター)に勤務し、助産師、看護学校の教員などを経験。勤務の傍ら、02年に北里大学大学院看護学研究科を修了し、自分の強みと語る「がん看護専門看護師」の資格を翌年取得した。昨年時点でこの資格を持つ看護局長は、全国で2人だけ。専門医が多岐にわたるのと同様、より専門的できめ細かい看護、ケアへの期待やニーズは大きい。
○…患者への病名告知が一般的ではなかった10年以上前は、励まし支える看護が主流だった。幼い子ども2人を抱える、進行がんの40代女性と交わした言葉がある。「下の子に(自分を)覚えていてもらえないのが辛い」。胸中の心残りを口にしていた彼女は、現実を受け止めていた。がんが目に転移し、視力が失われていく中で、家族や同室の患者、看護師にも気を配る姿が脳裏に焼き付いている。「看護とは、その人らしさや尊厳をいかに保ち通せるか」。自宅で最期を迎えたいという患者もいる。専門家として、どんな医療を提供できるのか。がん医療全体の未来を見据え、自問自答する。
○…4月に新人看護師31人が仲間入りしたが、平均年齢は36歳と高め。夜勤があり、子育て中の職員もいる中、仕事と家庭の両立は永遠のテーマだ。「どうやったら働きやすいか。職員の声を聞きながら、共に歩んでいきたい」。立場や環境、世代を超え、十人十色の人生に寄り添う日々は続く。
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