木工品など約140点を手作りする木工大工職人 齋藤 茂さん 和泉町在住 81歳
広がる縁、大木のよう
○…心を込めて生み出した作品には温もりがあり、命を宿したような愛らしさがある。木目の美しさを残したイスやおもちゃなど多種多様な約140点を揃え、11月18日に自宅で木工品フェアを開催する。作品は趣味として約10年間作り続けたもの。「来てくれた人の笑顔が見たい」と材料費だけの低価格で販売する。話し始めたら止まらない木材への愛情。この道70年の職人だ。
○…木を一目見るとその良し悪しが分かる。木目や年輪などから見極め、その性質を生かして家づくりをする職人の目。その目を養い始めたのは小学校を卒業した12歳。大工だった叔父を手伝い、週末になると弁当を持って現場へ出かけた。様々な木材の性質を覚え、19歳で職人に。任された現場は立派な門構えがある入母屋造(いりもやづく)りの日本家屋や寺院など。今では少なくなったが、特に好んだのが門柱に冠木を渡した「冠木門(かぶきもん)」を造る仕事だった。
○…29歳で生まれ育った千葉県から現在の和泉町へ。齋藤建築工業を設立し、一級建築士として家を建てた。自宅の隣にある工場で木材を削り、作業は深夜まで及ぶこともあった。それでも「逃げ出そうとは思わなかった。この仕事が好きで仕方ない」と笑う。40代で現場を二代目に任せ、事務仕事中心に。合間を縫って始めたのが、余った木材で造る木工品だ。近隣の人が散歩のついでに見に来ることもある。「子ども連れが遊びに来て、喜んで持って行ってくれるのを見るのが何よりの楽しみ」と我が子を送り出す表情はすこぶるやさしい。
○…曲がったことが嫌いな性格は「一生を過ごす家に嘘をついたらいけない」という情熱そのもの。笑顔を見せたら驚かれるほど「堅物」だった親方に、信頼を寄せる人が増えていった。「知らないうちに人が人を繋いで、その縁はまるで大きな樹のようだね」。枝葉を支える幹は半世紀以上を捧げた職人の愛情だ。
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