新橋町在住の中村博之さんの水彩画展「青春ルネッサンス」が喫茶室珈琲園(弥生台)で開催中だ。「いくつになっても何かに挑戦できると思えるきっかけになれば」と来場を呼びかけている。会期は1月31日まで。
現在75歳の中村さんにとって、描くことは生きることでもある。「自分を前向きにさせるエネルギーで、『まだできる』と思い続けることで勇気がわいてくるんです」と。今では月2点ほどのペースで作品を描く中村さんだが、かつては、創作を断念せざるを得なかった過去がある。
絵は公務員として働いていた現役時代に独学で始めたもの。友人に誘われ、絵画展や美術展に足を運ぶようになったのがきっかけだった。しかし、29歳の時に中村さんを病が襲う。急性十二指腸潰瘍。病気は珍しいものではないが、中村さんは吐血を繰り返すなどかなりの重症。医師からは「意識のある内に会っておきたい人を呼ぶように」と告げられるほど危険な状態だったという。
その後、何とか一命をとりとめるも、ウォーキング等のリハビリの日々が続き、絵に対する思いは封印。もともとスキーに野球にとバリバリの体育会系で体力に自信があったからこそ、自分の頭の中にある「かつての自分」に戻すのは時間がかかった。
そうして一年一年を積み重ね、今では「エネルギーたっぷりですよ」と胸を張る。定年退職後、青春時代の忘れ物を取りに行くように旭区のカルチャースクールで念願の絵を再スタート。以来、15年が過ぎ、描きためた作品は300点に上る。植物のもつ自然本来のいびつな形に惹かれるといい、それらを見つけた瞬間は「恋に落ちる気持ちと一緒」とロマンチックな中村さん。作品には、その時の想いを綴った文章が必ず添えられている。大切にしているのはリアルさ。特に花びらの薄さは、絵の具の重ね塗りや、水量の調節をしながら何時間もかけて仕上げるという。
そんな自身をいつも隣で応援するのが妻の栄美さんだ。聞けば、洋裁・手芸が得意な栄美さんとは互いに作り手として認め合う仲で、アドバイスも心地よいという。中村さんは「私の場合は絵でしたが、展示を通し、いくつになっても何かに挑戦できると思ってもらえるきっかけになればうれしい」と話している。
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