詩吟の最高位10段の免状を取得した 長嶋 初子さん 和泉町在住 90歳
いま、青春真っ只中
○…伸びやかで明るい声。ハキハキとした語り口は90歳という年齢を感じさせない。詩吟の最高位10段の免状を、今年7月に受けとった。始めて20年。10月には90歳以上が出場する神奈川県大会に出場する。「70歳を過ぎてからが私の青春」と誇らしげな表情が印象的。はまゆう吟詠会の横浜深岳会に所属し、現在でも毎月2回、いずみ中央地域ケアプラザで活動している。友人の誘いを受けて始め、「暗記して声を出す。これが面白い」とのめり込んだ。詩吟のみならず、書道や絵手紙、コーラス、俳句、新体詩など幅広く活動している。
○…1927年、東京都江東区亀戸に2人姉妹の長女として生まれた。亀戸尋常小学校に通い、その後、軍需工場だった日立製作所に学徒動員。18歳になったばかりの3月10日、東京大空襲を経験した。迫る火の海の中、妹の手を引いて走った。髪は逆立ち、服は焼け焦げ、目には火傷。黒い煙が充満した空に、ポカンと浮かんだ太陽を見た。「まるで白夜のように太陽の輪郭を見た。今でも忘れられない」。青春のすべてを戦争で失った。
○…疎開した山形で出会った夫。戦後、3人の子宝に恵まれた。その後子どもを抱えて現在の和泉町へ。軍需工場で習った製図の技術を生かし、製図を作成する仕事を請け負った。技手士の夫と二人三脚。生活のために頭を下げて仕事を引き受けた。必死に働き続け、60歳で仕事を終えた。
○…「踊りをやってみたら」。夫から助言を受け、舞踊を習い始めたのが60歳。いずみ歌舞伎にも約15年携わった。その後さまざまな文化活動をするようになった。10歳年上の夫は「今まで苦労かけたから、何でも好きなことをやりなさい」と言葉を残して他界。旅行やサークル活動で予定はいっぱいだ。「活動を通して、たくさんの友人ができた。仲間と話をする時間が今はとても楽しい」。弾けるように笑った。
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