父子で守る地域の安全 戸塚消防団第二分団・中村親子
3月11日―。その時、中村浩一(ひろかず)さん(51)(柏尾町)は、消防車のメンテナンスをしていた。今までに体験したことのない大きな揺れを感じて、一旦自宅に戻ると、消防団の制服に着替えて、息子の幸介さん(21)と家を出た。電話が通じず連絡が取れない中、消防団の拠点には、ほとんどの団員が集まった。団員は、交通整理や柏尾小学校に取り残された児童への炊き出しなど、分担して行動。交通整理など、普段訓練していないことも「誰かがやらなければ」と自主的に動いた。幸介さんは「『自分でも役に立てる』と実感しました」。
中村さんは親子2代で消防団に所属している。父の浩一さんは9年前、息子の幸介さんは3年前に入団。浩一さんは、マンションの防災管理役を担うなど「自分の家は自分で守る」意識が高かったため、友人に入団を誘われた時も「地域に深く関わる良いきっかけになる」と、入団を決めた。そして、幸介さんが、入団が認められる18歳になると、すぐに入団を勧めた。「自分に何かあった時に助けてくれる人が必要だと思ってね」と笑う。
戸塚消防署によると、団員の高齢化が問題視されているというが、幸介さんは幼いころから父と夜間の見回りや防災訓練に参加していたこともあり、躊躇せずに入団した。その後、幼馴染の友人も誘い入団。「きっかけがあれば、若い人も入団しやすくなるんですよね」
震災後、2人は消防団とは別の仲間と炊き出しボランティアとして宮城県名取市へ。道路の脇に路上駐車のように置かれている漁船や、多くの瓦礫に呆然とした。「テレビの映像では伝わらない」凄まじい景色が広がっていたという。名取市長から「現地を見てほしい。現状を多くの人に伝えてください」と言われ、被災地の実状を知って、後につなげてほしいという思いを受け取った。「実際に戸塚で同じことが起こった時にはどうすればいいのか…」。答えは見つからず、不安は拭えない。しかし、「地域で協力して街を守る」その気持ちでもしもの時に備えている。
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4月18日