早く地元のために働きたい 戸塚町へ越した仙台市の小野さん
「地震か?」。仕事をしていると、ふと、錯覚することが今もある。
仙台市若林区。夜通し続いた仕事を終え、眠っていた小野義明さん(35)はその時、地震で目が覚めた。「ゴゴゴゴ」という地鳴りとともに、すさまじい揺れが自宅を襲った。家具は全て倒れ、まともに歩けない。自宅の工場にあったバイクを修理する機械は2トンもの重さだったが、それも倒れ、壊れてしまった。
4月の終わりまで客と連絡の取れない日が続いた。中には亡くなった人もいる。仕事は休業。引っ越しのアルバイトを始めたが、本業がままならない状況に焦りを感じていた。そんな時、被災地で支援活動をしていた戸塚区選出の前県議・北井宏昭さんに仕事を紹介してもらい、9月に戸塚町へ移住。以来、泉区の「MKコーポレーション」でバイクの修理をしている。
できることを常に
日々やれることを探すことで乗り切ったと、震災後の生活を振り返る小野さん。先の全く見えない生活から、不安につぶされてしまう人、自ら命を絶つ人もいた。「余計なことを考えないよう、自分に何ができるかを常に考え、お互いに助け合う。強い気持ちを持たないと耐えられない状況でした」。小野さんには山形県に住む彼女がいる。「年内には結婚したいね」。お互いにそう話し合っていたが、実現は遠のいた。
一方、被災地支援には感謝でいっぱいという。東戸塚などで飲食店を経営する近藤一美社長らが行った炊き出しでは、プロの料理に舌鼓を打った。「震災後、こんなにおいしい物を食べたのは初めて」と喜ぶ人もいた。「力を、かなり、かなりもらってる。この恩を忘れちゃいけない」
震災後に強まった地元愛。「自分にとって一番大切なのは、家族や地元の人間。いつになるか分からないけど、お金を稼いで、早く地元のために働きたい」。故郷を思いながら、誰にも負けないというバイク修理の技術を手に、働く。
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