第29回全日本武術太極拳選手権大会の種目「24式太極拳A」で5連覇 齋藤 弘子さん 上倉田町在住 64歳
「平目平視」の心で
○…そっと構える姿は、ゆっくりとしなやかに、かつ堂々としている。太極拳を始めて36年目。朝の日課は自宅で行う2時間の練習。日々の積み重ねが柔軟性とゆるやかな風格を生んだ。「40代、50代は緩みがなかった。60代になってやっと太極拳らしい動きになったねと先生にも言われる。時代を経て、今があるんです」
○…聖和学院高校(逗子市)を卒業後、農林水産省に入省。定年までの41年間、事務官として庶務や会計業務を行った。太極拳との出会いは、30歳の時、1カ月間の中級研修でだ。同じ研修生の中に、太極拳経験者がいた。経験者が「朝食前に一緒に太極拳をやろう」と呼びかけ、健康のために参加したのがきっかけ。無理なく続けられ、体の調子も上々。研修後、戸塚地区センターの太極拳教室に入った。体を動かすことが好きで、バドミントンや卓球、合気道など様々なスポーツに挑戦。太極拳はその1つ。「浮気してたのよ」と笑いながら振り返る。
○…40代のころに転機が訪れた。多忙を極め、無理がたたってすい臓と肝臓を悪くし、倒れた。そのころから、太極拳1本に絞った。自分を見つめ直し、太極拳が心にゆとりを与えた。当時は、「懐に辞表を忍ばせて上司と戦ったこともあるのよ。短気だったのよ」と語る。しかし、太極拳で呼吸を整えることでストレスも解消。体調が改善し体力も維持できた。太極拳を知れば知るほど技を習得したくて、夢中で練習した。今では指導をするまでになった。
○…現在は地域活動にも力を入れる。区内3カ所で誰でも参加できる太極拳教室を開講。仲間同士、週に1度でも顔を合わせ、横のつながりを持たせたいという。高齢者が受け入れられる地域を目指す。「太極拳は『平目平視』。分け隔てない優しさ、ゆとりを持って、面と向かって人と向き合う。平らな気持ちで付き合っていきたい」。太極拳が生んだ優しさは、技にも人に対しても澄んでいる。
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