横浜市が全面的な見直しを進める「防災計画『震災対策編』。修正素案では中学生に地域防災の担い手として意識高揚を求める方向性が示されるなど災害時の地域における若年層の役割に期待が高まるなか、戸塚区は10月21日、中学生対象の「防災対応力研修」を実施した。市消防訓練センター(深谷町)を使用した中学生の本格的な訓練は市内で初めて。
通勤や通学で地元を離れている大人が多い平日昼間に地震が起きた際、中学生の体力や判断力は十分にその代役を果たすものとして、防災対応力の向上を目的に企画された研修。区内9つの中学校から有志で約50人の生徒が参加した。
訓練内容はトイレパックや地下給水タンクの取り扱い方、心臓マッサージなどリアリティのあるもの。がれきに埋まった人形をジャッキを使って救出する訓練では、戸塚消防署員から「自分の力でどうにもならない時でも、助けたい気持ちが大切。声をかけるだけでも勇気づけられる」と指導を受けていた。
また地域連携の強化を目的に、当日は地域の青少年指導員約140人も参加。部活動や塾通いで地域とのつながりが希薄になりがちな中学生と訓練を行うことで交流を図った。
開催日は日曜日にも関わらず、生徒の多くは自主的な参加によるもの。戸塚中学校の女生徒は「今まで無関係と思っていたけれど、東日本大震災を機に防災訓練への意識が変わった」と参加理由を話したほか、心肺蘇生法を学び「研修ではできても、いざ本番となると不安。でも、やっぱり何かやらなくてはいけないと思う」と感想を述べた。また、区担当者は「中学生は体力があり、防災の知識を身に付ければとても頼りになる存在だと実感した」と振り返り、来年度も継続したいという。
伴う危険性
岩手県釜石市の小中学校で長年防災教育に携わる群馬大学大学院の片田敏孝教授は、「津波が来たら逃げること」を教え込み、中学生には「君達は守られる側でなく、守る側」と、弱者を連れて逃げるよう指導してきた。
その教えもあり、東日本大震災時には近隣の子どもの手をひいて避難する中学生の姿も見られ、市内の小中学生ほぼ全員が無事。後に「釜石の奇跡」として世間に広く知られることになった。片田教授は「弱き者を助け、中学生も地域の一員として役目を果たしてくれた」と語る。
一方、高齢者を助けようと駆けつけた先で地震の第二波に遭い命を落とした生徒もいたことにふれ、「教えが間違っていたとは思わない。しかし危険性も伴い、子ども達を地域防災の力と位置付けて良いのか正直迷いがある」と話していた。
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