戸塚町にある「まめの木薬局」を経営する薬剤師・遠藤好彦さんが(39)が、10月からメキシコで開かれる、事故や病気などにより、手足に切断障害がある人などが出場する「アンプティサッカーワールドカップ」の日本代表選手に選出された。遠藤さんは現在、仕事と練習に勤しんでいる。
「アンプティサッカー」は、1980年代にアメリカ人の切断障害者が発案したもので、元々はベトナム戦争負傷兵のリハビリの一環として始まったという。フィールドプレーヤーは下肢切断者が、ゴールキーパーは上肢切断者が務める。試合は少年サッカーと同程度の大きさのコートで行われ、7人制・25分ハーフでゴールを奪い合う。オフサイドはないが、通常のサッカーとほぼルールは同じだ。
ワールドカップは1998年のイングランド大会から始まり、今回で11回目。日本は2010年のアルゼンチン大会から出場し、4年前のメキシコ大会で決勝トーナメントに進出するほどの実力を持つ。
「昔の感覚がよみがえる」
「チームが好結果を残せるよう、歯車の1つとして全力を尽くしたい」。穏やかな口調でこう語る遠藤さんは、地元の冨士見ヶ丘幼稚園、大正小・中学校、金井高校を卒業後、18歳で昭和薬科大学に入学。キャンパスライフが始まった矢先の5月、原宿の自宅近くで二輪車運転中に事故を起こし、右足の太ももから下を失う。「直後に大ケガをしたことは分かりましたが、切断に至るとは思わなかった」と当時の心情を吐露。入院、手術、リハビリを経て、大学に戻ったのはその年の秋になっていた。
遠藤さんは小学生から大学入学後もサッカーをプレーしていたが、事故で断念、以後意識的に遠ざかってきたという。「封印してきました。テレビ観戦すら避けていて」
大学卒業後、薬剤師の職を得て25歳で職場結婚。娘2人の子宝にも恵まれる。そんな中、35歳のとき、大きな転機が訪れる。妻がアンプティサッカーの存在を知り、内緒で現在所属するチーム「FCアウボラーダ」の体験会の段取りをつけてしまう。当初は拒否していたが、ある日意を決して参加してみると、その面白さに圧倒、以後のめり込んでいく。「クラッチという杖を両手で持ってプレーするのですが、もの凄い疲労感。でもパス回しなどしていると昔の感覚がよみがえってくるんです」。チームではミッドフィルーダーを担当、すぐに頭角を現し、今回選考会を経て、ついに日本代表選手の座をつかんだ。
遠藤さんは昨年6月に薬局を開院、公私共にエネルギッシュに動いている。「辛かったが結果的に足を失ったことで今があります。同じ境遇の仲間もできた。今大会ではベスト4を狙います」と力強く語った。
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