南舞岡在住の棋士、瀬川晶司さん原作の映画「泣き虫しょったんの奇跡」が、9月7日(金)から全国で公開される。35歳で脱サラし、プロ入りを果たした異色の経歴を持つ、瀬川さんの挑戦を描いた物語だ。
この映画は瀬川さんによる同名小説(講談社文庫)が原作。”泣き虫”だった少年時代の瀬川さんが、将棋と出会い、挫折を乗り越え、プロ入りを果たしていくまでの成長が描かれている。
中学時代に全国大会で優勝歴のある瀬川さんは、プロ棋士の登竜門・奨励会に14歳で入会。腕を上げていったが、26歳の年齢制限の壁にぶつかり一旦夢が絶たれてしまう。
一時は将棋を離れ学生生活を送っていたが、ずっと応援してくれた父が交通事故により他界する。「自分の好きな道を行け」という父の言葉を思い起こした瀬川さんは、ふたたびプロを目指しサラリーマンをしながら実力を積んだ。そして35歳で、奨励会退会後のプロ編入試験突破という史上初の快挙を成し遂げた。
演技指導にも協力
「始めて映画化の話を貰ったのは去年の春。本当なのかなと驚いた」と瀬川さん。メガホンを取るのは、同じく奨励会に所属した経験を持つ豊田利晃監督だ。瀬川さんは「将棋の魅力や厳しさが爽やかに描かれている」と感想を語る。また「将棋が好きになるきっかけとなった恩師」とあおぐ日限山小学校時代の教師や、幼馴染のライバル、プロ入りを支えた仲間や家族らが豪華俳優陣によって演じられている。
主人公の瀬川さん役を演じるのは俳優の松田龍平さんだ。「こんなにかっこいい人に演じてもらえていいのかな」と恐縮しつつ、「雰囲気まで演じ切ってくださった」と笑顔で話す。撮影開始前からキャストに対し、自ら将棋を指す手つきや作法の指導にあたってきた。「皆さん呑み込みが早くさすがプロと思った」と振り返る。
地元での指導も
今月には戸塚地区センターで、地域の子どもらに将棋指導を行うなど後進育成にも熱を込める瀬川さん。かつての自身を振り返りつつ、「将棋で負けるのはつらいが、悔しくて泣く子は強くなる」と地元の将棋少年少女にエールを送る。
「どの世代でも楽しめる作品だが、とくに子ども達には、何かに熱中することの良さを感じてもらえれば」とし、「映画化は本当にうれしいが、あくまで本業は将棋。まだまだ上に行けると思っているので、プロとして結果を出していきたい」と語った。
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