元昭和大学准教授で詩歌・俳句の作品集などを出版している 山口 一彦さん 戸塚町在住 74歳
目に見えぬ「心」を豊かに
○…「泰山木(たいさんぼく) 白磁(はくじ)翳(かげ)らふ 華の蝕(しょく) 須臾(しゅゆ)の間(ま)寂びぬ その旅衣(たびごろも)」。ドイツ文学者の元昭和大学准教授がコロナ禍に上梓した詩歌・俳句の作品集「牧神(パン)の囁(ささやき)」。そこに収められた、病床に伏せ亡くなった親友に向けられた挽歌だ。白い大きな花が一瞬で滅んでいく寂しさを表現している。一方で日常の何気ない場面や趣味の相撲観賞を詠んだくすりとするものも多数収録。「読みやすい句から読んでもらえれば。挽歌も普遍性のあるものとして受け取ってほしい」
○…高校時代にヘッセの小説に熱中し、ドイツ文学を学びたいと当時優秀な教授がそろっていたという学習院大学へ。その後、文芸評論家・川村二郎氏の書に衝撃を受け研究者を志す。「都立大で師事を受けた恩師。大学に就職が決まったときにはブランデーを振舞われた」と懐かしむ。大学で学生に人気だった授業の題材、映画『シンドラーのリスト』に関する論文を退職後に出版。座右の銘は「人間にとって一番大事なものは目に見えない、心」。真摯(しんし)に内面を見つめ続けてきた。
○…7歳で区内に越してきてから60年以上が過ぎた。母校の東戸塚小学校では「校庭に米駐留軍のかまぼこ型兵舎があった」とほほ笑む。40代で俳人・山口誓子氏の作品に初めて触れ「短い語句でこんなにも世界観を表現できるとは」。今回の著作は詠み続けてきた自身の俳句等をまとめた2作目の作品集。創作への原動力は子のいない自身が生きた証を残すため。「随筆も含めた作品をあと1、2作は出せれば」
○…今回の本はコロナ禍に出版が決まったもの。ストレスがたまりやすい今、人々の心が折れないようにという願いを込める。「文学の目標は心を豊かにすること。皆さんを励ますことができれば嬉しい」
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