今こそ、地域力を デスク・レポート
▼甚大な被害をもたらした「東日本大震災」。連日メディアから伝えられる被災地の様子は人々の記憶に深く刻まれたことだろう。被災地の避難所では大地震発生から20日経った今も多くの人が身を寄せ、不安な日々を送る。避難生活が長引けば、身体的、精神的な負担も相当なものだ。今回の震災では、避難指示圏内に孤立した人や、避難所で命を落とす高齢者も少なくなかった。直下型の大地震が関東を襲えばこうした事態が栄区で起こることも想定できる。
▼公田町団地(1160世帯)内に空きテナントを活用した地域交流拠点「お互いさまねっと いこい」がオープンして明日で1年が経つ。栄区の中でも特に高齢化率が高く、買い物の不便さや孤独死などが問題になっていた同団地では、日ごろから顔の見える関係を築こうと、自治会が見守りネットワークを作り、「いこい」を拠点に毎週「青空市」を開くなどの活動をしている。3月11日の大地震発生後も停電の中、多くの住民が何か情報を得ようと「いこい」に集まった。この1年で自治会に加入していない人も気軽に顔を出すようになったという。一人暮らしの高齢者世帯には自治会の災害対策本部が訪問し、安否確認も行った。「孤立する人を減らさなければならない。地震をきっかけに「いこい」の存在意義や地域のつながりの大切さを再確認できた」と自治会長の大野省治さんは話す。日ごろの活動が少なからず住民の不安軽減に役立った。
▼栄区は地域活動が盛んなまちだ。区ではこの地域力をさらに深めようと現在、「セーフコミュニティ」に取り組み、本紙でも特別号を同日発行してその内容を紹介している。災害や事故、事件など”別の場所で起きたことは、自分の身にも起こる可能性がある”とし、原因を分析した上で、地域ぐるみで予防活動を行うこの取り組み。地震から身を守ることはもちろん、被災地の避難生活の中で起こっている不測の事態なども教訓として無駄にはできない。
▼「セーフコミュニティ」を活発なものにするためには一人ひとりの意識向上と参加が不可欠だ。「日ごろから何を備えるべきか」を考え、行動することこそ、志し半ばに無くなった多くの犠牲者のために今、我々ができることだろう。
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