4月25日から25回目の記念展を開催する栄区美術家協会の会長 赤堀 郁彦さん 柏陽在住 74歳
現代を伝統芸術とともに
○…これまで栄区内で開催してきた協会展。25回の節目は区外で開催しようと、2年前から準備をすすめてきた。「栄区で色んな人が活動していることを知ってもらいたい」。会場の赤レンガ倉庫ギャラリーにはさまざまな手法で描かれた絵画や彫刻、漆芸、人形など多彩な美術作品が並ぶ。会員は20代から90歳前後まで40人。8年前から会長を務めているが、創作ジャンルや活動ペースが異なる会員をまとめるのは容易ではない。「1年が短くて」と笑う。
○…幼いころから絵が好きだった。小学校卒業時、教諭から絵の具をプレゼントされ、「嬉しかった」と目を細める。実家が家具屋だったこともあり、家具のデザインに興味を持ち、高校では木材工芸科へ。19歳の時、働きながら進学した大学の工芸科で先輩に勧められ、「漆」と出会った。1つの作品を完成させるために35余の工程を要し、失敗が許されない漆芸。完成には半年以上かかる。始めたころは漆によるかぶれにも苦しんだが、この道を続けてきたのは「東洋的で光沢が美しい」漆の魅力の虜になったから。「漆を磨く日本の技術は他国と比べても素晴らしい」と話す。
○…多くの展覧会ので入選や紺綬褒章、横浜文化賞受賞、作品が横浜美術館や県庁に収蔵されるなど輝かしいが、大学卒業時、世間は安価な商品が溢れる使い捨て文化。職人の道を離れ、映画や着物、文具など職を転々とした。誘いを受け、横浜で再び漆芸の道を歩み出したのは1965年。以来、創作の傍ら、技術指導などにあたっている。「漆芸を生業としてやっている人は市内でも少数。後世に残したい」と思いは熱い。
○…現在は宇宙をイメージし、現代の素材であるステンレス製の金属を伝統的な漆芸の中に取り入れる斬新な創作に取り組んでいる。「多くの人に興味を持ってもらいたい。協会も人が多いほうが活性化する」美術への関心を高めるための柔軟な発想は尽きない。