1周年を迎えた神奈川県国際言語文化アカデミアの所長 三國 隆志さん 鎌倉市在住 63歳
異文化への扉開く学舎に
○…閉校した県立外語短期大学の後継教育機関として昨年1月、小菅ヶ谷に開設された「国際言語文化アカデミア」。同校の教授や准教授、講師らがこの1年、1000人以上の受講者に語学や文化などのさまざまな指導を行ってきた。肩書きは「学長」から「所長」に―。当初は大学とは異なる環境に「戸惑いもあった」というが、今は「少しながら歩き始めたと思う」と安堵の表情を浮かべる。
○…多文化共生社会の実現に寄与することを目的とする同アカデミア。その内容は外国語に関わる教員を対象にした講座と外国籍県民と関わる団体等を対象にした講座、一般を対象にした教養講座に分かれる。「教員はプロ。外国籍県民と関わるNGOもプロに近い。プロがプロに教える難しさは大学では感じたことがなかった」。大学に一番近い形の一般を対象にした講座にも、元教授や外国に長く居住していた人など、経験や知識が豊富な人の姿がある。「常に知的好奇心を持っている人が多い。日本は潰れないでしょう」
○…出身は北海道の帯広。小学校にはアイヌ人のクラスメート、高校で通った函館も多くの宗教、民族が集まり、異国情緒に溢れていた。「自然と異文化に触れていたと思う」。大学進学を機に上京。「内地は海外のようなイメージだった」と笑う。大学で出会った恩師に影響を受け、興味を持ったのはアメリカ文学。アカデミアでも英米文学史に沿って多文化共生を学ぶ講座などでその知識を披露する。「大学の英文科のレベルを維持しながら、地味に淡々と教えたい」
○…2月25日にはアカデミア開所1周年を記念した「アルゼンチンデー」を初めて企画し、講座や映画、ショーや料理などで異国の魅力を地域の人に広く伝える。「40年以上あった外語短大の歴史も背負っている。性別、国籍関係なく、勉強したい人が集まる開放的な場にしたい」大きな一歩を踏み出したばかりだ。