金沢区獣医師会の会長を務める 小野 隆之さん 富岡東在住 49歳
全ての命に「良い時間」を
○…今年1月、金沢区獣医師会の会長に就任。会員医院では、動物愛護週間にペットの検便や飼育相談を行う。「最近は災害時の対応の相談が増えた」と話すが、件数はまだ少ない。「もっと相談に来てほしい」と訴える。
○…片吹出身。西柴小学校の図書館で動物の生態観察記を夢中になって読んだ。「同年代の子が興味を持つ電車より、僕は動物だった」。可愛がっていた祖母の犬が亡くなった時、悲しみの中で「同じ亡くなるでも苦しまなくて良い方法がきっとある」と子ども心に感じていた。淡く抱いた動物への興味は、いつしかはっきりと形になる。「どうせやるなら全てに携わりたい」。飼育員に比べ医療行為に制限のない、獣医師の道を志した。
○…「大好き」という金沢区。22年前、開業の地に釜利谷を選んだ。「動物は自分の命の消し方を知っているのでは」と思うようになったのは10年が経った頃。飼い主の帰宅を待って息を引き取ったり、安楽死が決まった翌日にひっそりと姿を消したり―。そんな場面を多く見てきた。「救うなんて通用しない。自然治癒を手伝っているに過ぎないんだ」と気付いた。寿命を伸ばすことより、痛み苦しみを取り除いて1秒でも良い時間を過ごさせてあげたい。「飼い主も含めていかに寄り添うか、それが僕の仕事」。その「仕事」に「先生良くなったよ、ありがとう」と声をかけられるだけで心に灯がともる。
○…家では中学2年の男の子のお父さん。2人で映画に行くことも。獣医である両親の背中を見て育つ息子に「一代で終わっても良い、将来は自分のなりたいものに」と幸せを祈る良き父。今後の目標は医療機器などをシェアできるような個人病院のネットワークを作ること。「横浜は紳士的な獣医師が多いのでより繋がりが強まれば。愛を持って助け合う関係に」と熱をこめる。「ここは僕が生かされる場所。引退は考えられない」。生涯現役を誓った。
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