神奈川県立フラワーセンター大船植物園にヒマワリの絵55点を展示する 川浪舎人(とねり)さん 釜利谷南在住 67歳
植物の移ろい描く
○…ソメイヨシノの固い蕾(つぼみ)が花開き、やがて散り、緑や赤の実をつける―。季節ごとに表情を変える植物の移ろいを、4枚の絵で綴る「4枚シリーズ」が代表作だ。「昨日描いたアガパンサスでちょうど1500枚目」と顔をほころばせる。
○…福岡県生まれ。自然に育まれた「やんちゃ坊」が、植物に関心を持ったのは高校2年。友人宅で見たサボテンの一種、ジュウニノマキに心打たれ、120種のサボテンを集めた。その後、大手種苗会社に就職。「上司から植物は学名で覚えなさいと教わった。物事は正しく。でないと世界に通用しないと」。教え通り、作品には必ず植物の学名を記している。36年種苗と向き合った経験は、後に続く画家人生の礎となっている。
○…退職後、56歳でタクシー運転手に。客を待つ間、ふと目にとめたネジバナ。メモ用紙にボールペンで描いてみると「これネジリ草でしょ」と声をかけられた。「それまで絵なんて描いたことなかったのに、自分の絵が分かるんだと嬉しかった。それからですよ、夢中になって描いたのは」。乗客に絵を見せてアドバイスをもらうこともあったという。すると「運転手さんの好きそうな花が咲いているよ」と知らせる人も現れ、絵を通した出会いが広がっていった。成長ごとに形を変える植物に魅せられたのは間もなくのこと。その過程を描くスタイルを確立。今は夜明け前に起床。6つ設けたコースを歩き、植物を観察しては描いている。
○…ヒマワリを正面や真横など5つの角度から描いた作品に「今まで一方的に人を見ていたが、色んな角度から見るべきだと教わった」と感想をもらした観客がいた。何事も角度を変えて見るようにと願いをこめて、6月に産まれた初孫にこの絵を贈る予定だ。「絵を通して子どもたちに、物事を感じる大切さを伝えたい」と微笑む。9月からは区内で色鉛筆画教室も始める。夢の蕾が1つ、また1つと膨らみだす。
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