認知症介護者 夜間緊急時に不安 窓口設置を望む声も
全国で462万人にも上るといわれる認知症高齢者。介護者の悩みも、症状や介護方法、介護サービスの利用法など多岐にわたる。特に、デイサービス事業所やケアマネージャーに連絡がつきにくい夜間緊急時は、不安を感じる介護者がいるようだ。
西柴に住むTさん(80)は昨年8月、突然夜中に激しい腹痛で嘔吐、下痢に悩まされた。「救急車を呼びたかったが、夫を置いていくことを考えると、どうしてもできなかった」と振り返る。
当時、同居していた夫(87)は認知症で寝たきりの状態。夜間のため、担当のケアマネージャーに相談しようにも、所属する事業所の電話番号しか分からず連絡することができなかった。「今まで味わった中で、一番長い夜だった。苦しいし、とても惨めな気分になった」とTさん。結局、一晩中痛みを我慢し、翌日子どもに来てもらったという。「私がいなくなったら、夫はどうなるのかと心配で。いろいろなことを考えてしまった」と当時を思い出しながら、涙ぐみながらに語る。その後、Tさんの夫は老人ホームに入居した。
高齢化が進む中、介護者が高齢者というケースは決して少なくない。介護者は、常に「私が倒れたら」という不安と隣り合わせだ。Tさんは自身の経験を踏まえ、「夜間などの突発的な事態に対応してくれる窓口があるだけで、介護者は精神的に救われる。後に続く人のためにも、検討して欲しい」と訴える。
相談件数は微増
横浜市は2010年、介護の経験者・専門家が認知症についての悩みを聞く「よこはま認知症コールセンター」(【電話】045・662・7833)を開設した。相談件数は2011年度で839件、12年度で1067件。症状に対して対応法を聞く内容が一番多かったという。相談時間は火曜・木曜・金曜の午前10時から午後4時。「24時間開設して欲しい」との要望もあるというが、委託事業者の選択や予算など検討課題は残る。また昨年、横浜市立大学附属病院(福浦)に認知症疾患医療センターが開かれ、診断や治療に加え、専門医療相談の窓口(【電話】045・787・2852)も設置している。こちらも受付時間は平日の日中のみの対応で、夜間に相談できる窓口はない。
区内認知症7千人
昨年6月、厚生労働省研究班(代表者/朝田隆筑波大教授)の調査で、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計で15%に上ることが分かった。13年1月1日現在、金沢区の高齢化率は23・7%で、高齢者数は4万8844人。この調査から推計すると7326人が認知症高齢者となる。またMCI(正常と認知症の中間状態)の有病率推定値は13%に。こうした”認知症予備軍”も6349人いると推計される。実に区内高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍となる計算となった。
超高齢化社会を迎えるにあたり、社会全体で認知症患者とその家族を支える体制づくりが求められる。
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