きょう10月2日に刊行された「帰来草」の著者 松崎 雅美さん 柴町在住 43歳
歴史に息吹与える
○…「自分の書いたセリフがここにあるなんて」。処女作「帰来草」のページを愛おしそうにめくる。一度大手出版社の文学賞を掴みかけた作品。10年越しの思いは地元・岩下書店が行う出版キャンペーンの選考をくぐり抜け、ようやく日の目を見た。「絶対に夢は叶う」。本を通して伝えたいことが一つ増えた。
○…愛知県出身。小説より漫画が好きな少女だった。「歴史を知るきっかけが漫画」と話す。「王家の紋章」に魅了された小6の夏は、エジプトを知ろうと書籍を求めひとり名古屋に向かった。以降、一度本にはまると時代背景を調べ倒すように。大学在学中に出会った夫の影響で、歴史小説にも興味のベクトルが向いた。「読まないと話が合わないから」といたずらっぽく笑う。
○…タンカーに乗る夫と9回の転居を重ね、10年前にたどり着いたのが金沢。歴史と海――探していた街だった。間もなく心奪われたのが称名寺にある北条実時の胸像。”かっこよさ”につられ調べると実時の人生に惹きこまれた。その時1週間で書き上げたのが、鎌倉時代を舞台にした帰来草だ。物語を生むもう一つのきっかけは、子どもが通う剣道場にいた胴着の似合うきれいな少女。主役は彼女が務めることに。冒頭、彼女の髪色を館長に咎められる場面がある。奇しくも10年経った今「娘が館長と同じ会話をしている」と笑う。
○…歴史の息づかいを感じて歩く金沢が好きだ。「妄想のスイッチが入る」と鎌倉時代にいる気すらする。子ども3人と旅行する時は時代背景を踏まえたガイド本を作成。「背景を知れば興味が湧く」。経験が出した答えだ。現在は大化の改新を題材に小説を再執筆中。結婚当初、歴史の常識を塗り替えたという「日本原紀」と「日本書紀」を読み比べ、漢文と照らし、年表も完成させている。「歴史は非現実さが好き」と話す。「大きな事件しか分からない。その間に何があったのか自由に考えられるから」
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