4月1日付で金沢消防署長に就任した 小出 健さん 三浦市在住 54歳
全身全霊で「故郷」守る
○…「故郷に帰ってきたようだった」と着任時の心境を語る。消防学校を経て初めて配属されたのが、金沢消防署だった。その後も2度、区内で勤務を経験した。「温かい人が多い場所。恩返しをする意味でも、全力で消防署の舵取りをしていく」。人命の最優先はもちろん、文化財の保護にも注力する。「市内でも特に歴史のある町。脅威から文化財を守る取り組みを強化したい」と話す。
○…初めての現場は忘れられない。初冬で、住宅が全焼する大きな火事だった。「とにかく先輩の指示に従うだけ。無我夢中だった」。消火活動は夜中から朝まで続きようやく完全鎮火。極限に達した心身の疲れと寒さを癒したのが、町内会による炊き出しだった。「おにぎりと味噌汁が、本当に温かかった。この時の感謝がモチベーションとなり、今に続いていると思う」
○…大学生時代は海外へと渡り、ボランティア活動に精を出した。主に第二次大戦の残留日本兵捜索や、死亡した日本兵の遺骨捜索だ。「最初は海外を見てみたいという単純な理由だった。しかし続けるうちに人の役に立ちたいという気持ちが育まれたのは間違いない」と振り返る。フィリピンへの渡航中には運命的な出会いも。村長の娘と文通を交わし、徐々に親交を深め、のちに交際。国際結婚に至った。「今でも仲良く、家族みんなでワイワイガヤガヤやってます」と笑顔。
○…長い経験の中でもひときわ記憶に残るのは、東日本大震災だ。緊急消防援助隊の神奈川県隊長として福島県を訪れた。「壊れるはずがない」と信じていた消防団器具置場や消防団車両が壊れていた。「やりきれない思いだった。この出来事を忘れてはならない」――被災地での経験をふまえ、区の取り組みにおいても減災対策を重要視していくという。「今後庁舎も変わり、機能強化が図られる。203人の職員一丸となり、区民の皆様の安心を守っていく」と誓いを述べる。
|
<PR>