横浜市は6月26日、土砂災害警戒情報の発表と同時に避難勧告を発令する52カ所の地域を公表した。金沢区内は8カ所で約940世帯(約2200人)が対象に。市は崖崩れで死者が出た昨年10月の台風以降、土砂災害対策をすすめており、今回は専門家の調査を加え精度を高めた。だが、緊急時に住民が迅速に避難できるかなどの課題も残る。
市は昨年の台風18号で2人の死者が出たことを受け、緊急対応として大雨などで人命に被害が出る恐れのある崖地を202カ所指定。これらの崖地周辺は土砂災害警戒情報の発表と同時に避難勧告を発令することとした。その後、崖地付近の人家の有無や工事状況を市職員が調査し、昨年11月末には133カ所に見直していた。
今回はさらに精度をあげるため、地質専門家の調査結果を踏まえ、崖崩れが発生した場合、人家に被害を及ぼす可能性がある崖地として、133カ所のうち24カ所を抽出。加えて県指定の土砂災害警戒区域内にある約9800の崖地のうち、災害発生の確率が高い、西・南・磯子区内にある約1400カ所から29カ所を新たに選定した。その結果、計52カ所(南区で1カ所重複)を避難勧告の対象崖地とした。市は2017年度までに残りの区でも同様の作業を行う予定だ。
情報伝達など課題も
だが、実際に避難勧告が発令された際、避難ルート、夜間時の対応方法など、住民が適切な対応が取れるようにするには、なお整備すべき課題も多い。
09年に兵庫県佐用町で用水路があふれ、夜間避難した住民が流された。内閣府災害ボランティア活動検討会委員で、国際救急法研究所の宇田川規夫理事長によると、死者18人、行方不明者2人を出した水害は、12人が避難行動中に命を落としたと予想されている。宇田川理事長は「住民の半数は警報を聞いておらず、夜間のため自宅に留まった人も。行政の情報を参考に自身で避難のタイミングを計る必要もある」と語る。
市は、土砂災害発生ハザードマップの全戸配布などを通して啓発活動に力を入れている。「52カ所以外は安全ということではない。気象状況により避難勧告を出すので、情報に留意してほしい」と話す。
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