10周年を迎えた浮雲俳句会の主宰で、金沢区俳句協会の会長も務める 北野 清市さん 能見台在住 86歳
17音で綴る生きた証
○…2008年、金沢区生涯学習”わ”の会に「俳句の分科会やってくれないか」と乞われ、浮雲俳句会の主宰となった。当初は会員の多くが初心者。季語がなかったりと、俳句の体すら成していない句も。それでも句会の時間の半分を費やし、丁寧に基礎を教え込んだ。そんな積み重ねで、今や区内の他団体と肩を並べる存在に。このたび同会は、その足跡を一冊にまとめた「十年の歩み」を発刊した。「何年たっても記憶として残るのが俳句の良さ。生きた証の17音になる」と力を込める。
○…「花吹雪 からだに浴びて ポトマック」。1990年、アメリカ東海岸を旅した時のこと。それまで俳句など詠んだこともなかったが、言葉が自然にあふれてきた。「尾崎行雄の贈った桜を米国人みんなが眺めている。ビデオや写真では到底表現できない心象だった」と振り返る。その後、5つの俳句結社に所属し、研鑽を積む。12年には「俳句読本」を上辞した。
○…警察庁のキャリア組として、北は青森県から南は熊本県まで、13都道府県に勤務した。「引っ越しは26回」という妻の言葉に「そんなにあったか」と苦笑い。だがそれぞれの地域での生活・経験が地域の風景を詠む「ご当地俳句」の血肉となった。群れをなして飛び立つ熊本の鶴、青森のねぶた、伊豆半島の風景――「俳句と共に方々の風景がすぐに浮かんでくる」と当時を懐かしむ。
○…今年1月、飲んだ帰り道に金沢文庫駅前で倒れた。一過性の心不全だった。病床で感じたのは花や緑、自然の力。「人間は弱いと思った。思いやりの気持ちが芽生えました」。妻曰く、「いわゆる昭和ひとケタ生まれの男性」が普段は口にしない感謝の気持ちをにじませる。体調は徐々に回復し、100回目となった5月の句会も元気に参加した。「俳句の輪をもっと広げたい。みなさんに楽しんでもらいたい」――その真っ直ぐな思いは続いていく。
|
<PR>