2016年秋の叙勲で瑞宝単光章を授与された 野本 修三さん 富岡東在住 76歳
自覚高く地域守り半世紀
○…「消防団に恥じないよう、一生懸命活動することが地域の役に立つと思ってやってきた」。2011年の退団まで、消防団員として金沢の街を守ること半世紀以上。その功績が認められ、名誉ある瑞宝単光章を受勲した。伝達式のため皇居の豊明殿を訪れたばかり。「まさかもらえるとは。大変なこと」と頬を緩める。
○…漁師の街だった富岡東で生まれる。「八幡様のところまでずっーと海」。登校前は沖から帰る漁師の父を手伝い、帰ればふんどし一枚で一日中海を泳いだ。冬には冷たい手で海苔を何千枚と天日干し。「稼業に本気、遊びに元気が家訓だった」と笑う。中学を卒業すると漁師の道へ。同時に消防団に入団した。「何かあればすぐに街に出られる漁師が半分以上。当時はまだ地域の一員として入る感覚しかなかった」
○…自覚を芽生えさせたのが、75年頃に出場した県のポンプ操法大会。「敬礼など基礎から教わり徐々に意識が高まった」。訓練するのはいつも埋め立て途中の泥の上。半年かけて団員のいろはを身につけ、優秀賞をものにした。工業団地の埋め立てや能見台の造成など、地域を見守る中で時代も見つめてきた。分団長に就任した00年は女性隊員が誕生した年。分団小屋を使い易い環境にすべく「町内会を回って一所帯70円の寄付を募った」と団員思いの顔を覗かせる。だからこそ「口うるさく」なることも。「帽子のかぶり方や服装から、心構えをしっかりしないと。鬼軍曹と言う人も」と笑う。「組織には誰か一人厳しい人がいないとね」
○…「海が好き。漁師で一生を終わりたい」。100人以上いた仲間が陸に上がっても、未だ現役。朝5時に富岡川から沖に出る。「そりゃ楽しいよ。漁があった時の嬉しさがなければやってられない」。過酷な船の上だが、自身を育んだ海と共にいたい。地域への思いもあせない。「経験を伝えることが防災につながれば」。育った街に「恩返し」していく。
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