金沢区で育った竹に漆を塗り重ね、純金やあこや貝で化粧した和竿――。つくっているのは六浦在住の伊藤達雄さん(76)。50年前から製作を始め、300本以上を手がけてきた。
「日本の伝統を培う大切さ」に気付いた25歳頃から、漆器にどっぷりはまってきた。「器に入れる料理を知るため、閉店後に板前さんに習ったことも」と笑う。趣味の釣りと漆器がリンクしたのもこの頃。「釣りは本来優雅な遊び。品格や芸術性がないと」。漆塗りの和竿を思い立った。
ひとつのことを極める性格はここでも。職人の元でつくり方を聞き、分解してみるなど試行錯誤を重ねた。
もともと「地元の身近なものを使いたい」との思いで金沢自然公園や称名寺の許可を得て竹を伐採していたが、釣り竿に適した素材だと分かるように。「張りがあって強く、しなりが良い」。11月頃に伐採して2、3カ月天日干しした後、10年間は日陰で保存する。曲がったり、虫がついたりするため実際に使える竹はたった1割。火入れをして真っ直ぐに整え、漆を50回60回と重ね塗る根気のいる作業が続いていく。丹精込めた美しさに、釣り場で「譲ってほしい」と頼まれることもあるという。「売り物にはできない。みんなあげてしまった」と謙虚に笑う。
50年竹と向き合い、学んだことも多い。「陽があたる竹は短く、日陰の竹は長い。欲張らずに共生することを竹に学ばないと」。和竿を通じ「人の在り方」も伝えたいと願う。
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