横浜市内18区それぞれが「土地神」にキャラクター化され、横浜の「中心」を巡り争いを繰り広げる『横浜大戦争』(文藝春秋)が話題を集めている。
発売直後に増刷
『横浜大戦争』は、保土ヶ谷区出身の作家・蜂須賀敬明さん=人物風土記で紹介=が執筆。蜂須賀さんは、昨年デビューしたばかり。第1作目『待ってよ』は松本清張賞を受賞。同作は、受賞後第1作となる。
初版6千部で6月15日に発売されると、4日後には増刷。横浜市内、神奈川県内の書店から「売りたい」という声が多数寄せられた。
出版元によると、受賞後第1作は注目されにくい傾向がある中で、発売直後から増刷がかかり話題を集めることは「奇跡」という。
地域特性活かす
物語の見どころは、各区を司り、十人十色の個性と職業、必殺技を持った18人の「土地神」たち。蜂須賀さん自身が市内を自転車で巡って調べ感じた地域の歴史や特性をもとに1人1人作られた。
例えば、石油工場や化学工場のある磯子の神は、薬品を操る科学者に。また横浜市立大学附属病院や横浜南共済病院など、医療機関が充実しているイメージから着想を得た金沢の神は、医者として描かれている。
さらに、分区した歴史のある金沢の神は、分区元の磯子の神と疑似兄弟として描かれるなど、各区の成り立ちを踏まえ血縁関係まで設定している。
神々がナンバーワンを巡り戦うストーリーは、地元愛の強いハマっ子の気質に影響を受けたという。「横浜市民は『おらが村』という意識があったり、いい意味で見栄っ張り。でもその気質が横浜を大きくしてきたと思う」
地元知るきっかけに
執筆の原動力となったのは「小説を書くことで横浜を知りたい」という思い。出身地ながら、中学・高校は都心の学校へ通学していたこともあり、地元を知るきっかけがなかった。
近年のご当地キャラブームも作品のヒントになった。「自治体が有名なイラストレーターに頼んだだけのキャラクターで、本当に地元色が出ているのか疑問だった。自分なら綿密に地域のことを調べてキャラクターを作りたいと思っていた」
特に本を手にとってもらいたいのは子どもたち。「区の歴史の本を読むより楽しんでもらえるはず。横浜を知るきっかけになれば」。360頁、1800円。
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