11月14日に金沢区の長浜ホールで講談「野口英世伝」を読む 宝井 琴星さん 港南区在住 72歳
古典に育つ新作を
○…産湯につかった金沢区能見台の地では初となる高座にあがる。演目は、長浜ホールにゆかりのある野口英世を題材に自身で書き上げた新作だ。「樋口一葉、福沢諭吉と合わせてお札3部作としました」。普段、講談に馴染みのない人にも興味を持ってもらえるような舞台を目指す。
○…10代の半ばから、一人で浅草や上野、新宿の寄席に通い落語や講談に親しんだ。見るだけでは飽き足らず、高校、大学では落語研究会に所属。「噺家さんになれたら」――そんな思いを抱きつつ話芸を磨いた。大学卒業後、2年間ほど地盤調査の会社に勤めたが「勤め人はあわない」と退職。師匠でもある六代目宝田馬琴に魅せられ、講談師の道に進む。以来、「生まれ変わっても講談師」というほど一筋に歩んできた。
○…ピーンと張りのある声にテンポのよい語り口。取材時も講談師の素養を垣間見せる。いわく、「まろやかな声が合う落語よりも、講談向きなんです」。いまだに、月に1〜2本の新作を作り続ける。「師匠は古典一筋だったけど、自分は新作を作るのが好きでね」。作った話を後輩が高座でアレンジしながら読んで、伝え広がっていくことを願う。「自分の新作もいつか”古典”と呼ばれるようになって、後世に残っていければ嬉しいねえ」
○…師匠から受け継いだ40年以上続く講談教室の講師を務める。「飲み会だけ来る生徒も。縛りがないからこそ、続くのかな」。今年は新型コロナの影響で年間80ほどあった高座が激減した。そんな中、動画をYouTubeで配信するなど新しい挑戦も。「講談は高尚なものじゃない。だからお客との距離は狭くないと」。時代と共に変化する大衆芸能の良さを伝え続ける。
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