金沢文庫芸術祭でネパールの復興支援を呼びかける チットラカール ディポックさん 横須賀市在住 47歳
ネパールの”未来”育てる
○…14世紀のネパールで王族より曼荼羅絵師に認められて以来、脈々と伝統をつないできた家系。国の祭で用いる品は一族が手掛ける。「誇り。次も家族の元に生まれたい」と微笑む。その母国が、4月の大地震で甚大な被害を受けた。「できるなら神様になって全ての人を救いたい」。真っすぐな思いが復興支援へ突き動かす。
○…世界遺産も幼い頃は遊び場だった。「ダルバール広場で像の腕から顔を出したら抜けずに大騒ぎ」。やんちゃ少年だが筆とは常に一緒。「曼荼羅は一つの人生」。自然や人間を深く知って描ける世界だが、自分は根底まで理解しているのか――「親元にいたらこのままだ」。最高指導者の元に通い、教えを乞うと「カーテンがとれたようにすっとした」。独り立ちの第一歩だった。
○…導かれるように来た日本。ミステリアスさに惹かれ、中学時代からひらがなを練習した。29歳で初来日。「昔から知っているように感じた」。観光のつもりが、縁が縁を呼び曼荼羅展を開く運びに。ありったけの額を提供する人、300もの客を呼ぶ人――不思議な出会いでとんとん拍子に次開催が決定。未知の国と、深めるべくして縁を深めた。版画家の妻との結婚を機に33歳で移住。2カ月後には横浜市の小学校で異文化を伝える講師に。目指すのは夢を与える授業だ。文化のほか、母国の厳しい現状も伝えるが悲観しない。「子どもは未来。国際理解を深め国を支える人を育てたい」
○…発災1カ月後すぐに母国へ。貧困が進む30家庭に1カ月分の食料を届けた。家族も心配だが「人を見ず平等に支援したい」と信念を持つ。だが食料供給だけではきりがない。「未来につながるのは教育」。3年前から曼荼羅教室を行うアサバアートスクエアの仲間と、倒壊した学校再建のため募金を開始した。小学校でも現状を伝えている。「支援が形に残れば日本の子にとっても大きな教育。感動の笑顔になる」。2つの国の未来を育てていく。
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