著・中野孝次 文藝春秋 物語でめぐるわが街 文・協力/金沢図書館『ハラスのいた日々』〈増補版〉
中野孝次(大正14年〜平成16年)は昭和・平成期の作家、評論家、ドイツ文学者で主な著書に『ブリューゲルへの旅』、『麦熟るる日に』等があります。
本書『ハラスのいた日々』は、著者が横浜市洋光台に引っ越したことをきっかけに飼うこととなった柴犬「ハラス」との生活がつづられています。新築祝いに何がほしいかを問われ、著者が「運動不足気味だから散歩用に犬でも貰うかな」と答えたことから、ハラスは中野家にやってきます。牛乳パックをくわえてきたり、冬の雪山で行方不明になったり。ハラスと過ごした何気ない日常や、中野家にとっての大事件が一人の飼い主の視点で描かれます。
著者はハラスを飼う前に、「やがて飼うことになる犬が、たんなる犬以上の存在になろうとは、そのとき予感していたわけではなかった」と述べています。子犬から成犬になり、やがて老いていくハラスへの著者の愛情は、年を経るごとに増していきます。他の人にとってはただの犬でも、自分にとっては愛しい家族同然の存在。そんな愛情が詰めこまれた1冊です。
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