金子さんの草花の不思議発見!第27回 クヌギ 冬でも葉が落ちない落葉樹 文・日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(金沢区富岡西在住)
冬の雑木林を歩くと、大部分の落葉樹は葉を落とし、殺風景な木立が目立ちます。しかし「クヌギ」(写真上)は、枯れた葉がそのまま落ちずに枝に残っています。なぜ落葉しないのでしょう。
落葉樹は一般に冬が近づくと、葉の働きが弱まり冬眠の準備に入ります。そして葉の役目をストップさせるため、葉柄の付け根(葉と枝の接点)に、離層(りそう)と呼ばれる境目を作り、葉と枝の間の水や養分の行き来を遮断させます。そのため落葉樹は離層ができると、葉の役目を終えて全ての葉を落とします。一方、常緑樹は冬でも葉の働きが多少残っているので、離層はできず落葉しません(※)。しかしクヌギ・コナラ類は、大昔ヒマラヤ山麓に生育する南方系の常緑樹でしたが、最後の氷河期の折、ナウマンゾウ等の動物と共に日本まで北上してきました。その結果、日本の気候に準じるように、冬になると落葉する性質を持ち始めましたが、まだ日本での滞在年数が浅いため、離層が十分出来上がっておらず、枯れ葉はそのまま枝に残っています。ただ強風に合うと落葉します。今後数百万年以上経れば離層は完成し、他の落葉樹と同じ状態になることでしょう。
※常緑樹も落葉しますが一斉ではなく、主に春から秋にかけて順次、葉を落とします(写真下)。
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