杉田9丁目、笹下釜利谷道路から上中里交差点を曲がり、坂道を登っていく途中、目に飛び込んでくる、コンクリート製の鉄道用枕木がずらりと並んだ塀と、むき出しの木材に囲まれた建物―ひときわ目立つこの不思議な建物だが、ここではかつて、東京モノレールの走行実験が行われており、枕木塀はその名残だという。
所有者である高橋道子(東京都在住)さんによると、この建物は、父親の憲雄さんが建てたもの。運輸省の技術研究所や日立モノレールなどで、鉄道技術者として勤めていた憲雄さんは当時、東京オリンピック開催などに合わせて開業準備が進んでいた東京モノレールの開発を担当していた。
実験に取り組むため、憲雄さんはこの場所に、車両車庫を兼ねた実験棟とテスト走行用レールを設置し、研究を重ねた。現在、敷地の周囲は市の緑地帯となっているが、当時はその場所も高橋さんの所有地で、実験線路が走っていたという。
道子さんは「父はカーブミラーを開発したり、現在も建設で使われているプレキャスコンクリート工法を当時いち早く取り入れたりもしていました」と振り返る。現在も残る実験棟も、この工法で作られている。
国産間伐材の展示施設に
その後も大学教授として研究を続けた憲雄さんだったが、1996年、88歳で亡くなり、道子さんがこの土地や建物を相続する。
道子さんは「都会の人たちに、実際に木の手触りや匂い、良さを感じてもらえる機会を作りたい」と、この場所を、国産間伐材を使った展示施設兼イベントスペースとして活用することを検討。”間伐材オタク”として有名な(有)ナベ企画の渡辺保さんと協力し、壁、天井、床、ウッドデッキなどに間伐材をふんだんに使用した「杉田梅の木坂よろず倶楽部ハウス」を5月末、オープンさせた。
今後は、地域の木である杉田梅の植樹にも取り組んでいくという。
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