3月23日から能面展を開く「面友会」の会長 渡辺松霜(しょうそう)さん 上大岡東在住 64歳
面に打ち込む思い
○…能面はあくまで能楽師が演ずるために使う道具。できる限り、使いやすいものを―。上大岡と千葉県で能面教室「面友会」を開き、能面師として生徒に技術とその信条を継承する。生徒と自らの作品を発表する展覧会を目前に控え、準備に忙しい日々だ。
○…初めて能面を打ったのは18歳の時。家の前にあった切株で「般若を作ってみよう」と考えた。工業製品の木型職人だった父の影響で、もともと工作は得意。しかし、その当時は見本や資料がなく、頼りは幼少期に映画で観た般若の記憶だけ。そうして完成した般若の面には2本の角とつり上った目、大きく開いた口には牙があるものの、「どこか違う」。それから新聞や雑誌に掲載される能面の写真を集めて資料にし、父とともに能面打ちにのめり込んでいった。「あの時仏像彫りに挑戦していた仏師になっていたかも」。明るく笑うが、原点となった般若は大切な作品として今でも玄関に飾っている。
○…能面打ち以外には、サボテン栽培が趣味。10歳の頃に商店街の縁日で買ったことをきっかに増え続け、今では千葉県にサボテン用の温室を3つ持つ。1人で温室を回りながら世話をするひと時は良い気分転換に。サボテンは普通の植物より水遣りが要らないが、「春は鉢の植え替えで忙しくなるよ」と少し嬉しそう。
○…女面や鬼面、翁面など約250種ある能面は、すべて手作業で仕上げるため、長いものでは製作期間に1年を要するものも。能面は「目が大事」で、1ミリ違うだけで表情が変わる。大量生産の既製品が溢れる時代だからこそ、「日本の伝統工芸品の素晴らしさを見直してほしい」。作品を通じて訴えたいメッセージだ。最後に今後の目標を尋ねると、「まだ作ったことのない能面もある。すべての種類を作りたい」。それは自らが資料のない中、能面打ちを学んできた経験があるからこそ。1人の能面師として、これらも作品を作り続ける。
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