横浜少年鑑別所の所長 阿部 政孝さん 港南在住 57歳
雑音から守る周囲の力
○…人は集団から評価される役割を演じる傾向があり、そのために善悪の基準さえ崩れることがある―。大学で学んだ社会心理学で集団が個に及ぼす作用に興味を抱き、心理を専門とする法務技官として法務省矯正局に入省。全国の少年鑑別所長や省内インフラに関わる業務を経て、4月に横浜少年鑑別所長に就任した。「長年の経験を活かし、職員の知識向上に貢献する。非行相談など青少年の健全育成に関わり、地域との関係も大事にしたい」。定年までに残された3年間にかける想いは尽きない。
○…学校生活の挫折が起因することが多い少年の非行。「子どもの居場所は学校という狭い範囲。だからこそ、そこでの失敗は自分の核をも失いかねない」。部活動で脚光を浴びていた少年が、腕力を活かせる場所を求めて非行に走ることがある。その背景にあるのは自分を認めてもらいたい気持ちだ。「食い止められるのは家族や周囲の人。同じ目線に立って、新たな道筋を探すサポートをしてほしい」と切実に訴える。
○…一男一女の父親として、かつては子どもと密着した生活を送っていたが、中学生になった頃から単身赴任に。以来、それまでとは対照的に過度の干渉はせず、本人の意見を尊重するようになり、それが結果的に子どもの自主性を伸ばすことになった。「親は子どもの成長を理解し、接し方も年齢に応じて切り替える必要がある」と自身の経験をもとに語る。
○…肩を怒らせて鋭い目つきで入所してくる少年も、静かで明るい環境に身を置くと、数週間でその年頃らしい自然な表情に変わるという。「鑑別所には世間の雑音が届かない。一人で考える時間をもつだけで本来の自分を取り戻す」。だが、出所後は再び”雑音”に取り囲まれる生活が待つ。「大事なのは自分を保つ力」と語り、「そのためには自分が大切にされていると実感できること」。強さを導くのもまた、周囲の力だ。
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