横浜市はこのほど、市所有の港南台4丁目の敷地に重症心身障害児の入所施設(入所定員200人)と保育所(定員約90人)を整備する方針を固め、地元住民に対して説明会を行っている。一方、市が一方的に話を進めていることに対して、一部住民から不満の声もあがっている。
整備が検討されている土地は、市が学校建設予定地として所有するもの。環状3号線を挟んで旧港南台高校(現横浜立野高校)の向かいに位置し、その面積は1万2846平方メートルにおよぶ。
市が今回、施設整備に着手した背景にあるのは、重度の知的障害や肢体不自由のある重症心身障害児(者)(以下、重心児)の施設不足。現在、市内では重心児約1050人に対して重心児施設は3カ所で、市外の施設や在宅介護を余儀なくされている重心児は約160人に上るという。
市は新たな候補地の選定について、【1】動きが不自由な重心児の移動などを考慮すると低層の施設が望ましく、一定の広さが必要、【2】体調の急変など救急時の対応が可能な病院が近隣にある、【3】交通アクセスの利便性がよい、【4】ボランティアの導入や障害児に対する福祉医療に携わる人材を育成する教育機関などの地域資源がある、との条件をもとに、すべての市所有地を対象に検討。これらを満たすとして、当該土地が候補地にあがった。現在、市内に学校建設予定地は21カ所あるが、学校以外の施設に用途変更するケースは今回が初。
一方、保育所については区内の待機児童61人(4月1日時点)の多くが港南台地区と上大岡地区に集中していることに加え、港南台駅南西部には保育所が設置されていない空白地帯であることから、待機児童解消に有効な場所と説明する。
負担大きい在宅介護
重心児とは、ほぼ寝たきりで自力で起きることや食事も不可能な状態にあり、移動には車椅子が必要。会話による意思疎通も困難だという。胃ろうからの栄養摂取や体温調整、痰の吸引が必要なケースもあり、在宅で重心児を介護する家族は大きな負担を強いられているのが現状だ。
一方、重心児施設には医師が常駐。十分な医療的管理を受けながら24時間入所して過ごす機能を持つほか、児童指導員や保育士も在籍するため、入所者は病院での入院生活とは異なり、さまざまなアクティビティを行う事が可能。また、児童福祉法の規定により児童福祉施設にあたるが18歳以上の入所も可能で、市内の既存施設でも約9割の入所者が成人だという。
建設反対の声も
一方、一部からは建設に反対の声もあがる。地域住民の1人は福祉施設の必要性については理解を示しながらも、「港南台は昭和40年頃の大規模開発時から、土地提供も含めて住民が一体となって区画整理事業に参加してきた地域。市だけでなく住民の土地でもある」として事前の打診もなく、一方的に話が進んでいたことに不信感を示し、白紙撤回を求めたいと話す。
これに対して市は、「行政内部で意思決定しない段階で住民説明会を開いては、逆に混乱を招く」と説明し、「今後は地域の要望・意見を考慮しながら進めていきたい」と話す。
また、当該土地に隣接する港南台つぐみ自治会は、「自治会としての意見はまだまとまっていない」としている。
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