大貫区長インタビュー 「地域と一緒に汗を」 協働重視 つながり育む
本紙は大貫一幸港南区長に2013年の港南区政についてインタビューを行った。大貫区長は高齢者福祉や災害対策など課題について語ったほか、昨年3月に採択した「みんなで見守り宣言」を基本に、協働の地域活動をさらに推進していく方針を示した。
(聞き手/本紙・佐藤信彦)
――昨年を振り返って。
「東日本大震災の発生から1年後の昨年3月、連合町内会長連絡協議会、社会福祉協議会、民生・児童委員連絡協議会、区役所の協働により『元気な地域づくり推進フォーラム』を開催しましたが、そこで地域のつながりと自助・共助が重要であることを改めて確認し合い、『みんなで見守り宣言』を皆さまと一緒に採択いたしました。
この1年、この見守り宣言にある、地域における1人ひとりのつながり、支え合いや見守りの大切さを認識しながら、地域の皆さまと協働で、『地域の皆さまと一緒に築く”安全で誰もが安心して暮らせるまち”』を目指し、区運営方針に掲げて取組を進めてきました。
各地域でも、宣言を踏まえながら、様々な取組が進んだ年になったのではないでしょうか。
高齢者や障害者など災害時に地域の助けが必要な方への対応では、自治会町内会や民生・児童委員を中心に取組が進んでいます。防災・減災対策では、地域防災拠点の取組と自治会町内会の取組との連携が進み、実践的な防災訓練が実施されていることを私も参加して実感しました。
また、大岡川・平戸永谷川・笹下川・日野川のクリーンアップのほか、区内の小中学生が地域づくり活動を行う『こどもフォーラム』の取組、2万人もの人にご来場頂いた『こうなん子どもゆめワールド』、地域、警察署、区役所が三位一体となって実施している『地域防犯パトロール』など、地域や関係者の皆さまのご尽力により、これまで以上の地域活動を進めて頂いております。
そのほか、区内全15地区連合町内会には、それぞれ福祉保健活動の推進と防災を中心に、様々な地域の課題を出し合って共有化し、解決のための取組を話し合う意見交換会を実施して頂いています。もちろん行政も共に取り組んでいきますが、そういった協働の活動事例を含め、今年度末の「元気な地域づくり推進フォーラム」で発表できればと考えています。
区役所としては、こうした『安全安心』や『元気』につながる地域活動を皆さまと一緒に、協働しながら進めて参ります」
「ふるさと港南」に向けて 高齢者福祉、防災・減災
――2011年度に実施した区民意識調査でも「高齢者福祉」への要望が高いという結果がありました。取り組んでいることは。
「港南区の高齢者の特徴として60歳代から70歳代のいわゆる団塊の世代とその前後の方が多くなっています。その方たちのお子さんが独立して港南区から転出し、高齢者夫婦2人の世帯や、ひとり暮らし高齢者世帯が増え、また、転入より転出が多いため、人口は減少傾向にあると考えられます。介護保険認定者数や後期高齢者層についても、10年前に比べれば倍増に近い急速な増加をしています。
こうした急速な高齢化により、高齢者福祉へのニーズは増大していますが、それを賄う市税収入は伸びていませんし、子育て施策の充実のほか、1970年代頃に建設された公共施設の維持保全に膨大な経費が必要になるなど、行政ニーズは高まっており、今まで同様の福祉施策を継続することはできない時代が間近に迫っていると言えるのではないでしょうか。
しかし、いかに厳しい時代にあっても、高齢者が地域で引き続き自立した生活が送れることを目指すことに変わりはありません。従いまして、より一層の介護予防、健康づくりを進めていくことが区民の皆さまにとっても、行政にとってもますます重要になっています。
高齢者がいきいきと活動的に地域で暮らしていくために、自助・共助の活動がより意味を増してきます。地域でも既に意欲的な活動が行われていますが、そうした地域での福祉保健やスポーツ活動をどんどんやって頂きたいと思います。例えば、ウォーキングイベントは区内各地で行われていますが、そこに参加する機運を作っていくことが大切です。参加すれば、健康づくりに役立つだけではなく、仲間づくりにもなります。区役所としてはそうした地域での活動が主体的、継続的にできるよう、あらゆる面から支援していきます。
そして、それぞれの状態に応じて、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する『地域包括ケアシステム』の実現を目指していきます。そうしたシステムの拠点の1つとして、区内で9館目の地域ケアプラザとなる『日限山地域ケアプラザ』(仮称)の設計を進めています。日限山1丁目の港南消防署消防訓練場跡地につくる計画で、15年の竣工を予定しています」
震災対策は
――同じく関心の高い災害対策の現状は。
「昨年3月に採択した『みんなで見守り宣言』を実践すべく、区民の皆さまと区役所が協働し、日頃からの支え合いの仕組みづくりと防災・減災の取組を一体的に進めています。
今年度は区内に174ある全自治会町内会に防災訓練を実施してもらうことを目標にしていますが、訓練経験がなかったり、実施方法を迷っていることもあるため、住民同士の話し合いから始めたり、隣の自治会町内会と合同で防災訓練を行うなど、地域の実情に合わせてもらえればと考えています。また、連合町内会長連絡協議会と協働で『防災訓練ガイド』を作成し、全自治会町内会に配布しました。内容には、日頃からのつながりづくりや見守りの必要性のほか、取組の実例などを盛り込んでいます。
東日本大震災の経験から、区民の方々の防災・減災に対する意識は高まっていますが、11年度の区民意識調査では『防災訓練に積極的に参加している』と答えた方が10%にとどまるなど、地域と一緒に、継続的に対応していく必要があると感じています。その一案として、地区ごとに防災訓練の案内や実施結果などを広報し、防災訓練に参加していない人にもきちんと地域のことを知ってもらえるようにしています」
――また、ひとり暮らしの高齢者や障害者など被災時に助けが必要な「要援護者」の個人情報を、行政が自治会等に提供する仕組みづくりを進めています。
「個人情報の提供が、地域の要援護者支援の助けになればという制度です。ただし、個人情報は持っているだけでは意味がなく、実際に要援護者対策に役立ててはじめて意味があるものです。また、個人情報は漏えいなどのリスクもありますし、見守りや支援の体制がなければ情報も役立ちません。地域で基本的な見守り活動を進め、日ごろから助け合える風土づくりが大切です。その上で必要な段階で個人情報を利用して頂くのがよいと考えています」
待機児童ゼロへ
――待機児童の状況は。
「少子化にも関わらず、経済状況の悪化などで保育所の入所申込者数はこの10年で1・8倍に増えており、保育所を整備しても待機児童がなかなか減らない状態が続いていました。そのため、この3年間(10年~12年)は市の体制を強化して集中的に保育所整備を行うと共に、区役所に保育専門の相談員『保育コンシェルジュ』を配置し、様々な保育サービスの案内や空きのある施設の紹介などを行っています。その結果、10年4月に134人だった待機児童数は、12年10月時点で4人にまで減少しました。
13年4月には新しく港南中央、港南台、上永谷に3園(定員計200人)が開所しますが、依然として申込者数が入所可能数を上回っており、認可保育所には入所できない児童もある程度生じると予想されます。2月以降、そのようなご家庭に保育コンシェルジュが電話がけをし、入所可能な横浜保育室や預かり保育を実施する幼稚園などをご案内し、待機児童ゼロとニーズに沿った多様な保育サービスの提供を目指します」
――来庁者用駐車場に建て替える新区庁舎の現状は。
「昨年3月に実施した『区庁舎再整備に関する区民アンケート』の結果で、特に要望の高かった『災害に強い安全・安心な区役所』、『どのような方(高齢者、子ども連れ、障害者、外国人の方など)でも利用しやすい区役所』といった意見を反映し、免震構造、バリアフリーデザインを採り入れながら、現在、設計を進めています。さらに、自然エネルギーを活用した設備を導入するほか、地域活動などの情報を展示できるようなスペースなども検討しています。今年度中に、具体的な建物計画や15年度中の竣工に向けた今後のスケジュールについて、お示しできる予定です」
――景気の悪化により、商店街に元気がないように感じています。行政としてできることはありますか。
「商店街の活性化は、重要だと考えています。景気は依然厳しい状況にあり、商店街の皆さまは大変ご苦労をされていると考えています。そうした中にあって、地域の賑わい・つながりづくり、商店街の活性化に向け、市補助金も活用頂き、上大岡4商店街の『大賀の郷ひまわりフェスタ』、丸山台商店会の『お絵描き行灯』をはじめ、様々な商店街イベントが行われています。港南区としても、引き続き各イベントのバックアップをするとともに、港南区商店街連合会と連携を深め、区内商店街の魅力をPRするなど支援を充実させていきたいと考えています」
――地産地消の取り組みにも力を入れています。
「生きることの最も基本的な要素である『食』とそれを支える『農(農業)』について体験し、理解を深めることで、地産地消の意義、地域交流の活性化、食育の効果を期待しています。
取組の1つである『農体験』では、実施場所を、区内の農業専用地区(野庭)とし、参加者の皆さんが『地域に育まれ地域を愛する=ふるさと意識の高揚』が持てることを目指しました。また、昨年は、港南区産野菜の直売会を区役所敷地内で開催し、地域産野菜を地域内で消費することのきっかけづくりを行ったところです。参加された方、直売に来られた方、農家さんのそれぞれから好評を頂きました」
――来年度の区予算編成の基本的な考え方は。
「港南区はすでに高齢化率が約23%という超高齢社会で、高齢のご夫婦の世帯や単身世帯も増えてきています。こうした中で先述しましたが、15地区連合ごとに、地域運営について意見交換する場を定例化して頂き、地域一体で防災・減災や支え合いの関係づくりがより一層進むように、区役所も一緒に取り組んでいきます。
そのための予算編成の考え方ですが、引き続き『つながり はぐくむ ふるさと港南』をテーマに、地域や関係機関の方々と共に、防災・防犯、福祉・保健、子育て支援、文化・スポーツ、環境などの様々な分野で、誰もが住みなれた地域で元気に暮らし続けていけるように、区役所としても地域と一緒に汗をかいていきます。合わせて、市民生活にもっとも身近な行政機関として、正確で丁寧な窓口サービスを行うなど、『共感と信頼』の区役所づくりを進めます」
――ありがとうございました。
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