古文書に親しむ会の講師として、会員と「北見家文書史料集」を発行した 田上 繁さん 上大岡東在住 65歳
古文書で学ぶ地域の歴史
○…さわやか港南で開催される月に1度の「古文書(こもんじょ)に親しむ会」で講師を務め、会のメンバーと共に上大岡村の名主(なぬし)だった北見家の古文書を史料集として編集、発行した。4年の歳月がかかったが「短かった」と充実した表情を見せる。
○…本業は神奈川大学の教授として近世日本経済史を研究。古文書を読み解くことで通説に切り込むのがスタイルで、現存する古文書を求め、その活動は全国に及ぶ。しかし、当初から学者を目指していたわけではない。北九州市に生まれるが、中学生の時に父が他界するなど生活は苦しく、「大学に行くという意識もなかった」。高校卒業後は働き口を求めて横浜へ。働くうちに「勉強がしたい」と一念発起し、21歳で神大の第二経済学部に入学すると、昼は働き、夜は学生の生活を送る。「自分のお金で学ぶのだから勉強しました」と笑って振り返るが、優秀な成績で大学院へ進み、研究者として歩み始める。
○…研究で古文書を保有する個人宅を訪ねることが多いが、代々保管してきた古文書を無条件で見せてくれるとは限らない。だからこそ大切にしているのは人間関係だと語る。蔵に調査に入れば小動物の死骸があるなど日常茶飯事。それでも「見させて頂く」という謙虚な姿勢は変わらず、今まで多くの古文書を読み解き、地域の歴史を明らかにしてきた。今は日本の歴史学をけん引した網野善彦氏の遺志を継ぎ、水産庁の事業として全国から集められ、未返還のまま放置されていた古文書の返還作業にも従事。多忙な日々を過ごす。
○…発行した史料集は現代語訳も掲載し、誰でも当時を想像できる意欲作だ。文中には村民同士が互いに助け合う当時の生活も読み取れる。そんな地域の歴史をきちんとした形で残すために、古文書を読み解ける人材を育成することが今の目標。「これからも地域で勉強できる場を考えていきたい」。活動の場はさらに広がっていきそうだ。
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