2013年秋の叙勲で瑞宝単光章(ずいほうたんこうしょう)を受章した 宮川 吉郎さん 笹下在住 78歳
まちを守る思いは消えず
○…消防団員として56年間、地域の消防・防災に尽力してきた。その功績が認められて2013年秋の叙勲で瑞宝単光章を受章。3月16日に行われた祝賀会には多くの人がお祝いに駆け付けた。「仲間にお祝いしてもらってうれしい」と顔をほころばせる。
○…叙勲は長年の地域活動を評価されてのもの。だが、受章を知らせる一報に当初は「断ろうと思った」。生まれ育った笹下のために役に立ちたいと続けた消防団。決して何かもらうためにやってきたわけではない―。そんな自負から出た言葉だった。大岡消防団に1956年4月に入団し、港南区の誕生と共に港南消防団の団員に。定年制が施行された2012年に退団するまで、地域に火事が起これば駆け付け、平時も月に2日、訓練や機材整備を続けてきた。それでも「大変と思わなかった」とさらり。警防団だった父や消防団の先輩の姿から、「まちを守る」という思いを自然に学んだからと振り返る。
○…代々農家の家で、子どものころの笹下は田んぼや畑が一面に広がっていたという。都市化の流れで一部農地を転用し、今は不動産管理会社を経営する一方で、現在も横浜市南西部農業委員として都市農業の発展に力を尽くす。消防団以外にも港南少年補導員を長く務め、連絡会の会長を歴任するなど、当たり前の活動として地域活動に携わってきた。「春には春の、夏には夏の花が咲く。みんな役割を持っている」。自然の中で学んだことは自身の生き方にもつながっている。
○…消防団員としてキャリアの終盤に東日本大震災を経験した。地域防災の要として責任が増した後輩に「命をつなぐため、昔は当たり前だった『まちを守る』という感覚を改めて伝えたい」と意欲を見せる。それでも実は「定年制がなかったらさ、あと300年くらい消防団を続けていたよ」とおどけながらも悔しさをのぞかせる。退いてなお、まちを守る思いは消えない。
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