導入された保育器はバッテリー搭載で移動可能
済生会横浜市南部病院（今田敏夫院長）＝港南台＝が、小児科病棟にＮＩＣＵ（新生児集中治療室）を整備し、今年２月からの本格運用を目指す。同院は横浜市の小児救急拠点病院、産科拠点病院に指定されていることから、小児科・産科で診療体制のさらなる充実化を図りたい考えだ。
ＮＩＣＵでは早産児や低出生体重児（２５００ｇ未満）、先天性の病気を持った重症新生児に対し、呼吸や循環機能の管理といった専門医療を24時間体制で提供する。厚生労働省の施設基準などで、看護師１人に対し患者は３人以下などの条件が定められている。
同院では２０１４年８月から３西病棟内にＮＩＣＵの整備工事を開始し、11月末に完成した。これまでも早産児や低出生体重児などは新生児室で対応していたが、今回小児科病棟内の６床２病室をつなげ、独立した部屋として整備。
最新の高度医療機器を導入し、新生児を６人まで受け入れられるほか、ＮＩＣＵ専属のスタッフも配置されることで、より質の高い医療が提供できるようになったという。
受入可能な条件は現在と同様、在胎32週以上かつ出生時体重が１３００ｇ以上の病的な新生児。さらに重症の場合は、県立こども医療センター＝南区＝などの基幹病院に転送される。
副院長で小児科部長の甲斐純夫医師は「念願叶ってのＮＩＣＵ。機器、スタッフともに充実させたことで、より高度な新生児治療が提供できる」と期待を込める。
中核病院めざし人材育成課題に
同院がＮＩＣＵを整備した背景には、05年度に横浜市の小児救急拠点病院、14年４月に市内３医療圏（北・西・南部）に各１カ所の産科拠点病院に指定された経緯がある。
小児救急拠点病院としては24時間３６５日の二次救急を担い、産科拠点病院としては周産期救急などに対応するため、夜間と休日の当直時間帯に医師２人を必ず配置している。
また、同院は神奈川県が運用する「神奈川県周産期救急医療システム」の「基幹」「中核」に次ぐ「協力病院」の指定を受けており、中核病院の最低条件となるＮＩＣＵを整備したことで、「ステップアップのための第１歩を踏み出せた」と同院事務局の福島敦次長。「今後現場で実績を積み、人材を育てていく必要がある」と気を引き締める。
行政との調整もあるものの、中核病院となることで将来的に受入可能な新生児の条件も拡がることが期待できるという。
高まるニーズと整備の遅れ
一方で出生数は減少しているものの、ＮＩＣＵの対象となる低出生体重児などが生まれる割合は増えており、ＮＩＣＵに対するニーズは高まっている。
県内における１９９９年から11年の増減では、体重２５００ｇ未満の低出生体重児は７０３７人から７２５９人、１５００ｇ未満の極低出生体重児は４６１人から５６５人、１０００ｇ未満の超低出生体重児は１８９人から２４７人と増加傾向。より重篤な新生児が生まれる割合が増えているのが現状だ。
14年時点で、市内ではＮＩＣＵが90床整備されている（同院を含まず）。13年の市内の出生数は３万７５３人で、県が目安としている出生数１万人に対してＮＩＣＵ28床という目安を超えている。
しかし、市内90床の中には全国から重症児が集まる県立こども医療センターの21床も含まれるため、実際にはＮＩＣＵ整備は遅れているのが現状だ。
同院では「ＮＩＣＵの整備により、高齢出産などリスクが高い、現代の出産事情に対応していきたい」としている。
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