横浜市と横浜市立大学、横浜市歯科医師会はこのほど、がん治療や全身麻酔が必要な手術を受けた後に発症しやすい合併症予防に有効な「口腔ケア」を推進する連携協定を結んだ。市民の関心を高め、手術を行う病院と地域のかかりつけ歯科医院の情報共有を円滑にする狙いがある。
「年間約1万4千件ある市内の全身麻酔手術では、医師の認識の遅れもあり半数で口腔ケアが行われていないのが実態」と同大大学院医学研究科の來生知(きおいみとむ)准教授は指摘する。
周知の徹底や病院と歯科医院の連携といった課題に対し、今回の協定で、最新知見を提供できる同大と地域の歯科医院とのパイプを持つ同会、市民へ啓発ができる市が連携して医療体制を整える。市内の医療機関に働きかけ、地域差や医師ごとの認識の差を埋める狙いもある。
患者の病状や治療方針を統一の計画書に記載し、円滑な情報共有を目指す「地域連携パス」のしくみを整備する。医療従事者や市民を対象とした研修や講演会も実施し、理解を促す。同会の杉山紀子会長は「患者本人で管理できるような指導にも重点を置く。健康促進につなげたい」と話す。
肺炎リスクを低減
新たな体制では、手術決定後に病院が歯科医院に依頼し、ケアや治療を実施する。手術後もフォローを続ける。
「手術前の口腔チェックが大前提。次に感染源を手術前になくすことや手術に影響を及ぼさない処置につなぐことが重要」と來生准教授。例えば、口から肺に通したチューブに付着するだ液中の細菌によって肺炎になる恐れがある全身麻酔を伴う手術では事前のケアで発症リスクを予防できる。
日本歯科医学会のデータでは口腔ケアを行った患者の肺炎死亡率は9ポイント低い。早期回復のほか、薬の投与量や入院費の削減につながる。「市内には歯科を持たない病院が75%。歯科医師数が限られる中、地域の歯科医との連携は負担減になる」という。
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