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港南区・栄区版 公開:2019年6月13日 エリアトップへ

人生100年時代を考える 「介護している人は素敵だよ」 毒蝮三太夫さんインタビュー

文化

公開:2019年6月13日

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TBSラジオ生放送後、取材に応じる毒蝮さん
TBSラジオ生放送後、取材に応じる毒蝮さん

 毒蝮三太夫(どくまむしさんだゆう)=本名・石井伊吉(いしいいよし)=さん(83)はTBSラジオ「ミュージックプレゼント」で50年以上にわたり、パーソナリティーとして全国のお年寄りを訪問。「ジジイ」「ババア」と毒舌をはきながらの温かみのあるやり取りがリスナーにウケている。NHK Eテレ『ハートネットTV 介護百人一首』の司会や聖徳大学の客員教授も務め、明るく楽しい介護を伝えている毒蝮さんに話を聞いた。

元気に歳をとろう。フェイス・トゥ・フェイスを大切に

――人生100年時代と言われています。

 「65歳で高齢者と言うけれど、オレに言わせればまだまだガキだ。70代はジジイババアじゃないよ、元気なんだからさ。ひと昔前とは違って、今でいう高齢者は80代、90代以上のことだ。

 人生100年時代、オレは『元気で歳をとろう』と言っている。病院や施設、警察、消防、裁判所は暇なのがいいんだ。今は介護施設や病院が混んじゃって、もう飽和状態。国の予算100兆円のうち4割が社会保障費だっていうんだから。社会として歪んでいるよ。

 少子高齢化が進んであと二、三十年すれば年寄りが年寄りを支える時代になってしまう。今がターニングポイントだ。長生きするなら元気に歳をとらないと」

――どうすれば毒蝮さんのように明るく元気に歳を重ねられますか。

 「オレの元気の秘訣は人に会っていることだ。今日もTBSラジオの生放送で柴又に行って、ジジイとババアをからかって、かまってきてやったよ。

 人間が孤独感を味わうのは、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションがないことが原因だ。今はインターネットで済んじゃうだろ。IT技術は悪いものじゃないが、頼り過ぎないようにしないと。

 オレはアナログ人間って言われていて、携帯電話も持ってない。メールじゃなくて手紙だよ。奥さんにも書くよ。書かなきゃさ、(キーボードを)打つだけでは情がわかないよ。

 AI技術で介護ロボットも開発されている。NHKの介護百人一首で『介護ロボットいいけれど手が冷たいのが気にかかる』なんて投稿があったな。手が温かくなるロボットも開発されるだろう。24時間見守ってくれるし、嫌がらないメリットはあるけど、ロボットが介護を担うには限度があるよ。何よりもフェイス・トゥ・フェイスが割愛されることは高齢者にとって悲劇だ。

 オレが元気なうちは高齢者をからかって、かまって、元気にして、引き籠りをなくしたいと思っている」

介護業界の人材不足、海外に頼る前にまずは待遇改善を

――介護ロボットが開発されている背景として介護人材の不足もあります。

 「介護福祉を教えている聖徳大学で、介護職を志望する学生は最盛期で100人位は集まったが、今は5、6人いればいい方だ。10年前と比べ、1割を下回っているわけ。

 若い人が介護職に就かないから、国は介護の仕事を外国人に委ねようとしている。それには言葉を教え、介護の技術を教え、大変な時間と労力がかかるよ。

 今いる介護職の待遇を改善することをやらず、安易に外国人に頼ろうっていうのは間違っているよ。日本人が日本の高齢者の面倒をみるのは最低限の条件だと思う。介護職の給料を上げるなんて、国がちょっと『忖度』すれば出る金だろう。

 欧米の介護現場では1人に2人の職員が付くけど、日本では10人を1人で看ないといけないような状況だ。それでは扱いが雑になることもあるだろうし、虐待にもつながりかねない。その点、日本はまだ介護の発展途上国だ。

 おじいちゃん、おばあちゃんが好きで、介護の仕事をしたいという優しい子は、今の日本にもたくさんいる。しっかりと給料を払って介護職の地位を高くてあげないといけない」

――今の介護について思うところはありますか。

 「年寄りも社会に甘えてはいけないよ。『戦後を頑張って生きてきたから大切にしろ』『施設をよくしろ』というだけではなく、元気になって医療費を使わない努力をすべきだ。その一方で、国は施設を作って質の高い介護人材を確保する。その双方向からの努力がないと、これからの社会は成り立たない。

 ラジオ収録で介護施設に行くと、飯はどうだ?職員は親切か?なんて聞くけど『金を払っているのにああだこうだ』って文句をたれるジジイがいるんだ。職員が足りないんだから、そんな気持ちを持っちゃいけないよ。

 いい介護をしてもらいたければ、面倒をみてもらって当然という態度ではなく、愛されるチャーミングな年寄りになるべきだ。(元聖路加病院の名誉院長で105歳で逝去した)日野原重明先生も、愛される患者になりなさいと言ってたよ。人が寄ってくる笑顔や人徳、素直さを持たなきゃ」

介護はさせていただく気持ちで。いろんなことを学べる学校だ

――愛されるお年寄りになるにはどうすればよいでしょう。

 「オレは下町のガキだし、親父は『でーく』(大工)でお袋は『たぬきババア』だろ。いい生まれじゃないんだから。どう気取ったってだめだよ。だから『おいババア、くたばりぞこない』というのは、オレにとっては『おばあちゃま、お元気ですか』と同じ台詞なんだ。

 『自分はいいとこの生まれだ』『会社の社長だった』『若い頃はモテた』とか昔話で偉ぶるやつが、年寄り同士でも一番嫌がられる。人気のあるじいさんは素直さや優しさがある。あとは身なりの清潔感だ。老人ホームの食堂で3食とも衣裳を変えてくるばあさんがいるって。ファッションショーをやっちゃうんだからさ。ジジイも見習って見た目を気にしないといけないよ。

 あとは若い人といることだな。じいさんだって若い女の子がいると、いいセーターに着替えようとか、帽子を被ろうとか考えるだろ。ばあさんもいい男がいればリハビリを頑張る。親切でいい男がいる老人ホームは、ばあさんが喜んじゃって空き部屋がねえっていうぞ。

 こんな一首もあったな。『介護する素敵な人にときめいて動機息切れさらに増す日々』って。令和(の語源)じゃないけど、もう万葉集だよ」

――毒蝮さんが説く明るく楽しい介護とは。

 「ある日、神楽坂を一人で歩いているじいさんがいたから、どうしたって声をかけたら、花見に来たんだって。女房がうるさくて弁当と水筒をもって家を追い出されてきたらしい。

 もう一人、カメラを下げた素敵な身なりのじいさんにも声をかけた。奥さんがデイサービスへ行っている介護の合間、退職した会社の部下がランチ会を開いてくれるから来たって。奥さんの写真を嬉しそうに見せてくれたよ。奥さんの写真を持ち歩くなんて珍しいよな。

 介護をしている人は生き生きした素敵な顔をしている。介護の辛さを生きがいにしている、素晴らしい人生の達人だよ。

 介護疲れ、介護鬱、介護離職、介護心中という悲劇もあって、大変な人はいるよ。でも、愛する人、大切な人を介護する喜びを高めていかないと。介護してあげるのではなく、させていただくという気持ちになってさ。介護が『悔護』にならないよう『快護』まで行けば達人だ。

 そのために施設を利用することはいいことだ。在宅介護の苦労を一人で抱え込んで、無理して自分を追い込むのが一番いけない。

 どうしたら人が喜ぶのか、介護は色んなことを学べる学校だよ。カメラを持っていたじいさんは、ちっとも辛そうじゃなかった。介護している奥さんの写真を嬉しそうに見せてくれるなんて、素晴らしい人生だ。家にいられずに弁当持って、なんて人生こそ辛いよ」

日本のジョージクルーニーになる

――どんな歳の重ね方が理想ですか。

 「歳をとっても多少の色気は必要だと思う。20代、30代の女の子から会いたいと思われるようなオレでいなきゃいけないと思うよ。ジムへ行ったり、自転車に乗ったり、努力もしている。

 オレはジジイの見本になるチャーミングなジジイ、日本のジョージクルーニーを目指しているんだ。今でも若い女の子を連れて2時、3時まで飲みに行くこともあるよ。おかまバーに連れて行ったりさ。

 オレはよく『古都になれ』って言っているんだ。清水寺や鎌倉は古臭いとは言わずに、行ってみたいと思うだろ。それと同じように歳をとることは魅力が増えるということにしていかないと。

 民芸品みたいなタレントになりたいとも思っている。(民藝運動を提唱した)柳宗悦さんが言うようにさ。芸術品のように飾るんじゃなくて、使い勝手がよくて飽きない。飾らず目立たず。そんな民芸品みたいな人間になりてえな」

――ラジオ番組は今年で50年目になりますね。

 「マイクや機材は変わったけど、生放送でオレがしゃべっていることはちっとも変わっていない。本職のアナウンサーも『マムシさんがしゃべっていることは何回聞いても飽きない。不思議なんですよね』って言ってたな」

――お年寄りがすごく喜んでいることがラジオの放送から伝わります。

 「オレは『歩くパワースポット』って言われてるんだ。パワースポットはそこまで行かなきゃだけど、オレは来てくれるんだからいいじゃないか」

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