ポーランドの指揮者コンクールで日本人初の2位に入賞した 伊藤 翔さん 西区戸部町在住 29歳
最上の音との出会い求めて
◯…若手指揮者の登竜門として知られる「ヴィトルド・ルトスワフスキ国際指揮者コンクール」。6日間に及ぶ過酷な審査を経て、2位入賞を果たした。「ようやくスタートラインに立てる、という気持ち。でも1位になれなかったことは謙虚に受け止めないといけないと思う」。大きな喜びと少しの悔しさ。その複雑な感情を素直な言葉にする。
◯…東京都生まれ。ピアノ教師の母が集めたクラシックのLPレコードを聴くのが大好きな子どもだった。するとある疑問が。「同じ曲なのに全部違って聴こえるのはなぜだろう」。やがて ”違い”を産むのが指揮者だと知る。「自分もやってみたい」。憧れはすぐ目標に変わった。3歳で始めたピアノに加えて、10歳でバイオリンと作曲の勉強に取り組んだ。大学卒業後はウィーンへ留学。2年前から神奈川フィルハーモニー管弦楽団の副指揮者を務めている。「自分を育ててくれている神奈フィルの皆さんにいい報告ができたことが一番うれしい」とはにかんだような笑顔を見せる。
◯…オーケストラと指揮者の関係は複雑だ。互いに音楽には一家言を持つプロ同士、ある時は衝突し、ある時は寄り添いながら、最高の音を探していく。「本番前はいつもすごく緊張して、なんでこんな仕事選んだんだろう、と思う。でもオーケストラから最上の音が引き出せた時、何にも代え難い喜びがあるんです」。ミューズが微笑むその一瞬のため、真摯に音楽と向き合う日々が続く。
◯…「まずはコンクールを忘れることが大事」。神奈フィルの常任指揮者で、師とも兄とも慕う金聖響さんから投げかけられた言葉だ。一つの成功が次の成功を約束してくれるわけではない世界。「結果は自信になったけれど、慢心している暇はありません」と気を引き締める。「いつかヨーロッパのオケを指揮したい」。大きな夢の実現に向けて、その歩みは第1楽章が始まったところだ。
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