”耐震性の課題”に疑問の声も
市教育委員会は今年3月、市立富士見中学校(中区山田町)を近隣の市立吉田中学校と統合させる方針を決定し発表した。富士見中校舎の耐震性不足と小規模校対策が理由だが、歴史ある両校の統合案に保護者、地域の間で動揺が広がっている。
学校側に市教委から校舎の耐震性の課題と統合案が伝えられたのは3月17日。それによれば市教委が平成20年と21年に行ったコンクリートの強度検査の結果、一部が低強度(強度が一平方mmあたり13・5ニュートン以下)と判定された。同校の出川校長によると3月11日の震災時には「校舎が大きく揺れ、一部の壁などにヒビが入っている状態」という。
補強工事を加えても国の決める現行の耐震基準を満たせないことから、市教委では昨年3月から対応を検討。一方で「方向性が決まっていない中で伝えると不安を煽ることになる」と、学校側にもその内容は伝えていなかった。
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市教委は6月4日、6日に両校保護者に向けた説明会を開催した。生徒の安全確保のため、富士見中学校グラウンドに仮設校舎を建て、平成23年度内に引越しを完了。並行して、統合を含めた内容で今後の方向性を話し合う検討委員会(両校の代表者で組織)を立ち上げる案を示した。
両校保護者は複雑な思いを隠せない。富士見中PTA役員らは「耐震性に問題があるならもっと早く言うべき」「小規模校の解消がありきで、耐震性の問題はダシに使われているのでは」とし、震災直後になった学校への報告に疑念を抱く。また吉田中PTA役員らは、両校合わせて約140人になる日本語支援が必要な生徒への学業上の支障や、現状で手狭なグラウンドの状況、また富士見中の耐震性の課題が不明確だとして、反対の意を示している。
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両校間は直線距離にして約300mで、富士見(224人・6クラス)、吉田(218人・6クラス)は市内147校ある中学校のうち最もクラス数が少ない。市で平成22年に策定した学校規模に関する基本方針の統合基準にあてはまるとし、市教委では以前から両校の統合を検討しており、「震災がなくても、同じスケジュールで進めていく予定だった」と強調する。一方で耐震性の課題を1年以上前に把握しながら学校側にも伏せていた事に関しては「(震災後の)今であるなら、そんな処置はとらなかった」と言葉を濁す。
市教委では今月下旬に両校の関係者を集めた2回目の説明会を開催予定。当初6月下旬に立上げ予定だった検討委員会は現時点ではまだ組織できていない。「生徒の事を思えば、ある程度早い段階で方向性を決めなければ」と話している。
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